研究実績の概要 |
【目的】肺動脈の拡張は、肺高血圧の重症度に関連すると考えられており、さらに2次性の肺高血圧を呈する心不全などの心血管病との関連も報告されている。CT で測定した肺動脈径と心血管病の罹患率との関係について検討した。 【方法】2016年度の1年間に群馬大学医学部附属病院で単純CT 検査を施行された連続症例のうち、高血圧、喫煙などの心血管リスクの情報がカルテから得られなかった患者や、肺切除術施行後の患者を除外した、計1,195名を対象とし後ろ向きに検討した。各患者における虚血性心疾患、心不全、心房細動についての情報をカルテから入手し、2名の循環器内科医が各心血管病の罹患有無を判定した。肺動脈径は、単純CT の右肺動脈レベルの横断面における主肺動脈の短径を測定した。肺動脈径と各心血管病罹患の関係について、年齢、性別、身長、体重、高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、および喫煙で調整したロジスティック回帰分析で横断的に検討した。 【結果】対象集団は平均年齢67歳、女性45%で、高血圧は29% の患者に認められた。平均の肺動脈径は26.8mmだった。1,195名の患者のうち、虚血性心疾患は162名(14%)、心不全は226名(19%)、心房細動は58名(5%)の患者に認められた。ロジスティック回帰分析による多変量解析の結果、肺動脈径と心不全(オッズ比1.04;肺動脈径1mm 増加につき, 95%CI 1.01-1.09, p=0.04)および心房細動(オッズ比1.04, 95%CI 1.01-1.09, p=0.04)罹患との間に有意な関連を認めた。肺動脈径と虚血性心疾患の間には,有意な関連は認めなかった。 【結論】CT で測定した肺動脈径は、他の危険因子と独立して心不全および心房細動の罹患と関連していた。肺動脈径は心血管病の有用なマーカーである可能性がある。
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