研究課題
我々は、ヒトミレニアムプロジェクトによりSNPsおよびマイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイド解析にて、さまざまな高血圧関連遺伝子を発見した。そのなかでもATP2B1遺伝子が、一般的なアリル頻度も高く臨床的に意義があると考えられた。本遺伝子機能が低下すると細胞内Ca濃度が上昇して、さまざまな機能が亢進する可能性があると考えて、我々はCre-loxpシステムを用いて、血管平滑筋におけるATP2B1発現を抑制すると、血管平滑筋細胞のCa濃度が上昇するとともに、血管収縮力が高まることを証明し報告した。一方で、腎臓、特に尿細管におけるATP2B1の役割は、高血圧のみならず生理的な意味においても興味深いが、その意義はほとんど知られていない。そこで、我々は、本研究で、腎臓におけるATP2B1の役割を明らかにするために尿細管特異的なATP2B1KOマウスを作成し、その意義を解明することとした。ATP2B1 exon10をtargetとしてloxpで挟み込んだloxPマウスと遠位尿細管(~集合管)にCreを発現すKSP(cadherin16)マウスを用いて、 尿細管特異的ATP2B1ノックアウトマウスを作成することに成功したことはすでに報告した。本マウスでは、Naの出納に影響をあたえるデータは得られず、KOマウスにおいても血圧は変化を認めなかった。このため、本遺伝子が尿細管における仕事の意義について、さらに解析したところ、KOマウスでは、尿量が有意に増加し、尿浸透圧が低下していた。KOマウスではAVPに対する反応が低下し、またAQPの発現が低下していることが明らかとなった。本研究により、ATP2B1は、血管平滑筋では収縮との関連性があり血圧に強い影響を与える遺伝子であるが、遠位尿細管から集合管において水代謝と関連することが明らかとなった。
3: やや遅れている
コロナ渦により研究の進行に遅れがあるが、すでに解析はほぼ終了している。あとは論文化にであるので、2023年度中に公表できるように鋭意、努力中である。
2023年度に論文化を目指す。追加実験については、すでに必要な研究をすすめている。
マウスの飼育費用、論文報告費用として最終年度に繰越金を残している。
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J Hypertens
巻: 20 ページ: 536-543
10.1097/HJH.0000000000003046