研究課題
TALENを用いたゲノム編集技術の活用により、T細胞レセプター(TCR)のα鎖とβ鎖のミスペアリングによる予期せぬ免疫反応のリスクをできるだけ抑えたうえで、細胞のダメージ軽減のために遺伝子導入のステップ数を最小化した抗原特異的TCR導入T細胞の作成方法を検討いる。これまでに、内在性のTCRをノックアウトし目的の遺伝子をノックインする方法を確立したが、本年度はさらに内在性のTCRをノックアウトすると同時にがん抗原特異的TCRをTRA遺伝子C領域切断部位にオン・ターゲットで導入する方法を検討した。TCRα鎖遺伝子およびβ鎖遺伝子を標的配列とする2組のTALEN mRNA(αTALENs, βTALENs)を合成・精製し、αTALENsの存在下にがん抗原特異的なTCR遺伝子をTCRα鎖遺伝子の所望領域に挿入可能なDNAベクターを作出した。第1段階で、βTALENs によりTCRβ遺伝子をノックアウトしたT細胞を樹立しておき、次いでαTALENsとTCR導入用ベクターをβ-KO T細胞に導入することにより、がん抗原特異的なTCRの発現が得られることの確認を試みた。テトラマーでは明らかなTCRの発現を確認できなかったものの、想定される結合部位の外側と内側にプライマーを設定しPCRで確認した所、Out-In PCR/In-Out PCRのいずれにおいても想定通りの長さのバンドが得られ、ベクター上のがん抗原特異的TCR遺伝子がon targetでゲノムに導入されていることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
本年は、従来より少ないステップでの内在性TCR遺伝子のノックアウトとがん抗原特異的TCRノックインにより、従来に比べバイアビリティの高い遺伝子編集T細胞を作出することが可能となった。
TALENによる内在性TCRのノックアウト、抗原特異的TCR遺伝子特異的TCRのノックインにより作出したゲノム編集T細胞のオフターゲット効果を評価し、遺伝子導入ベクターやTALENの改良を行う。また、本方法で作出したがん抗原特異的ゲノム編集T細胞の細胞障害活性をin vitro、およびマウスモデルで検討する。さらに、本方法を用いて制御性T細胞に抗原特異的TCRを導入し、抗原特異的制御性T細胞の免疫反応抑制効果を検討する。
設備品、実験試薬、実験器具等の購入予定が一部次年度となったため。また、新型コロナウイルスの流行により研究打ち合わせの一部、研究発表の一部がやむをえず中止となったため。
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