研究課題
遺伝子改変T細胞輸注療法は、がん抗原に特異的な受容体遺伝子を導入した腫瘍特異的T細胞を体外で増殖させ、患者に輸注することでがんを特異的に攻撃する治療法である。本研究では、T細胞の機能・分化・増殖に関連する因子であるとされるIRFファミリーの発現を人為的に調節して有効性が高い腫瘍特異的T細胞を作製し、我々が開発をすすめる非自己T細胞利用を可能とするステルスT細胞技術(内在性TCRの発現をsiRNAで抑制することにより組織障害を防ぎβ2マイクログロブリン(B2M)をゲノム編集で消去し、内在性TCR/MHCを持たず、宿主に排除されない)と組み合わせ、多くのがん患者に適用可能な抗腫瘍T細胞輸注療法を開発を目指す。研究期間を通じ、以下の研究実績が達成された。(1) Jurkat細胞およびαβ-T細胞にレトロウイルスおよびB2Mノックアウト用のレンチウイルスを感染させて作製したMHC消去、HLA-E強発現の細胞を用い、MHC消去でアロT細胞への刺激が減少すること、それに付随するNK細胞からの攻撃をHLA-Eの発現により抑制できることを示した。(2)貪食細胞からの攻撃回避に関与するCD47遺伝子、及び、(3)生体内での細胞死誘導への抵抗に関与する遺伝子をクローニングし、それらの発現の影響を検討した。(4)輸注T細胞としてγδ-T細胞を用いることを視野に入れ、γδ-T細胞におけるMHCの発現抑制、HLA-Eの発現を行い、γδ-T細胞においてもMHC抑制でアロT細胞への刺激が減少することを明らかにした。さらに、γδ-T細胞を用いた担癌マウスの治療実験を行いTCR特異的に癌細胞の増殖を阻害できることを示した。また、(5)培養条件によりIRF4の発現を抑制する方法を開発した。今後は、(1-4)の結果と合わせ、IRF発現調節とステルス化による有効な抗腫瘍T細胞輸注療法の開発を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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