心不全は心臓のポンプ機能低下を原因とする様々な症状により引き起こされる疾患で、生活習慣の欧米化に伴い患者数が増加してきたことに加えて、高齢化による患者数増加も指摘されており、いわゆる心不全パンデミックと称される患者数の急増が社会問題と考えられている。一般的に心不全の治療方法については、発症予防、進行抑制などを目的とした薬物療法、狭窄を認める冠動脈への血行再建、弁膜症などの形態的異常に対する外科的治療介入などが考慮される。また、あらゆる既存の治療方法を行っても心不全の進行を来たす重症心不全に対しては、補助人工心臓、心臓移植などの心機能の代替療法が考慮されるが、補助人工心臓については様々な生活上の制約、また脳血管障害、感染などの合併症があること、また心臓移植については限られたドナー数、免疫抑制剤の副作用などの問題点があり、いずれも適応を限定せざるを得ない状況である。そのため、心不全に対する新たな治療法の開発は、社会的にも重要な問題で、様々なアプローチから研究が進められている。 我々は、新たな治療方法開発のための手がかりとして、臨床的に観察される補助人工心臓治療での自己心機能の回復(functional recovery)に着目し、aPKC-c-Myc pathwayを中心とした分子メカニズムの解明を行ってきた。これまでに確立した臨床組織検体でのaPKC-FoXO pathwayの関連分子の免疫染色による検討を行うと共に、心筋細胞の培養細胞に対して機械的刺激を加えることでaPKC-FoXO pathwayの関連分子の検討をおこなった。本研究は、基礎研究としてこれまでに得られたaPKCの知見を、臨床的に観察され、新規治療法の開発に繋げることができる可能性のある事象の解明へと応用する研究であり、学術的独自性は大きく、その結果により新たな分野を開拓できる創造性を有するものと考えられる。
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