研究課題/領域番号 |
19K09305
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
杉本 誠一郎 岡山大学, 大学病院, 講師 (40570148)
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研究分担者 |
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30397880)
大藤 剛宏 岡山大学, 大学病院, 教授 (40452578) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肺移植 / 慢性移植肺機能不全 / 一塩基多型 / ジャポニカアレイ / 血中遊離DNA / 拒絶反応 / バイオマーカー / 呼吸機能 |
研究実績の概要 |
肺移植後の慢性拒絶反応である慢性移植肺機能不全(CLAD)は、肺移植後の長期生存を低下させる主な原因であり、移植後5年で約半数の患者がCLADを発症する。CLADは発症早期の治療介入により増悪を防止できる可能性があるが、現在の診断方法は呼吸機能に基づいており、早期診断が困難なため、早期診断を可能にする新しいバイオマーカーが必要とされている。我々はこれまでに、生体肺移植のドナーとレシピエントの一塩基多型(SNP)の違いから、レシピエント血中のドナー由来DNAを検出し、急性拒絶反応の新しい診断方法になりうることを報告した。しかし、限られたSNPの解析では、ドナーとレシピエントのDNAの類似性から診断が困難な場合があり、それを克服する新たな技術が必要であった。一方、ジャポニカアレイでは多量のSNPを微量の検体から安価に解析できるため、本研究ではジャポニカアレイを用いて、レシピエント血中のドナー由来DNAを測定し、肺移植後のCLADにおける新しい早期診断方法の開発を目的とした。本年度は、これまでに当院で保存された血液検体を用いて、ジャポニカアレイによる解析を試みた。しかし、ジャポニカアレイの解析では、従来の研究よりも多くのDNA量が必要とされ、保存された血液検体ではジャポニカアレイの解析に必要なDNA量が不足していることが判明した。このため、本年度に新たに施行した生体肺移植の症例から、ジャポニカアレイで必要とされるDNA量を満たした血液検体の保存方法に変更し、この血液検体を用いて、ジャポニカアレイによる約60万種のSNPを網羅的に解析し、標的SNPの同定を行った。予想通り、以前の解析方法に比べ、簡便に標的SNPを同定することが可能であったため、今後、レシピエント血中のドナー由来DNAを測定し、肺移植後CLADにおける新しい早期診断方法になりえるか、その可能性を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジャポニカアレイの解析では、従来の研究よりも多くのDNA量が必要とされ、これまで保存された血液検体では、ジャポニカアレイの解析に必要なDNA量が不足していることが判明した。しかし、新たな血液検体の保存方法を採用することで、この問題を解決することができ、ジャポニカアレイによる約60万種のSNPの網羅的な解析と、標的SNPの同定を行うことが可能であった。また、事前の予想通り、以前の解析方法に比べて、簡便に標的SNPを同定することが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
ジャポニカアレイを用いた解析では、以前の解析方法に比べ、簡便に標的SNPを同定することが可能であった。このため、今後、レシピエント血中のドナー由来DNAを測定し、症例数を重ねることで、ジャポニカアレイを用いたレシピエント血中のドナー由来DNAの測定が、肺移植後CLADにおける新しい早期診断方法になりえるか、呼吸機能に基づいたCLADの診断方法と比較して、その可能性と有用性を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで他の研究用に保存してきた血液検体のDNA量が、ジャポニカアレイで必要とされるDNA量を満たしていなかったため、ジャポニカアレイによる解析数が予想より少なかったことが次年度使用額が生じた理由である。新たな血液検体の保存方法では、ジャポニカアレイの解析に必要なDNA量を満たしているため、引き続き次年度に解析を進め使用していく。
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