研究課題/領域番号 |
19K09311
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
塩見 和 北里大学, 医学部, 講師 (50398682)
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研究分担者 |
江島 耕二 北里大学, 医学部, 准教授 (30327324)
小寺 義男 北里大学, 理学部, 教授 (60265733)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中皮腫 / 胸膜中皮腫 / 胸腔内治療 / バイオマーカー / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
胸膜中皮腫の予後を改善する新しい治療戦略の開発を目指し、①~③のアプローチで基礎研究を行っている。 ①低侵襲かつ局所制御効果の高い胸腔内局所療法の開発に関しては、小分子化合物の抗癌剤であるGemcitabine(GEM)をゲルとともに胸腔内投与した場合の徐放効果を正確に評価するために、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いた測定系を確立するための実験を行った。現在、GEM、GEM代謝物(1’-Epi2’,2’-Difluoro-2’-deoxyuridine)、内部標準物質(2’-Deoxyuridine)の分離、定量が可能になった。今後は、マウスにGEMを投与した後の血中GEM濃度曲線の作成を行い、この曲線を比較対象として、ゲルの徐放効果を評価していく方針である。 ②マウスモデルを使用した腫瘍根治メカニズムの解明および免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果予測マーカーの探索に関しては、腫瘍浸潤リンパ球を用いたプロテオーム解析を行うための予備実験を行った。マウス脾臓よりCD8+T細胞、CD4+T細胞を採取しプロテオーム解析を行う実験から、1×105~106個のリンパ球があれば、2500程度のタンパク質の同定が可能であることが分かった。また、マウス中皮腫細胞株(AB12)をBALB/cの皮下に移植したモデルでは、径10㎜前後の腫瘍塊が10匹分あれば、1×105個のCD8+T細胞、CD4+T細胞が採取できることを確認した。今後は、ICI投与前後で、腫瘍浸潤リンパ球において発現に差のあるタンパク質を網羅的に同定する予定である。 ③中皮腫の難治性組織型に対するバイオマーカーの探索実験に関しては、中皮腫組織での免疫染色の結果から、HDLBP、MAP4 の2つの分子を選択した。今後、これらに関して、肺癌検体での免疫組織染色を行い、中皮腫特異性の有無を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①胸腔内局所療法の実験に関しては、抗癌剤GEM(小分子化合物)の胸腔内投与実験は概ね順調に進んでいる。免疫担当細胞の胸腔内注入に関しては、抗原を認識しているCD8+T細胞、CD4+T細胞の効率的培養に難渋している。今後は、所属リンパ節よりリンパ球を培養する方法の再検討、および、腫瘍浸潤リンパ球を採取し、これをIL-2、抗CD3の抗体、抗PD-1抗体の存在下で抗原刺激を加えながら培養する方法を試していく予定である。 ②腫瘍根治メカニズムの解明およびICIの効果予測マーカーの探索に関しては、順調に進んでいる。細胞自体が小さく、タンパク量が少ないと考えられるリンパ球においても現行のプロテオーム解析が可能でることを予備実験で確認した。
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今後の研究の推進方策 |
①胸腔内局所療法の実験に関しては、HPLCを用いたGEM血中濃度測定系を確立後、マウス中皮腫胸腔内モデルにおいて、GEM投与後のゲルの徐放効果および予後改善効果を検討する。また、腫瘍抗原を認識するCD8+T細胞(所属リンパ節内、または腫瘍に浸潤しているもの)の効率的な培養法の探索を行う。 ②腫瘍根治メカニズムの解明およびICIの効果予測マーカーの探索に関しては、プロテオーム解析の結果、ICI投与前後で発現に違いが認められたタンパク質に関して、文献・データベースより候補を絞り、その後、免疫組織染色で確認を行う。また、ICIの効果が確認できている他のマウス皮下モデル(EMT、MC38、など)を用いて、ICI投与前後で動く分子のバリデーションを行う。 ③難治性の組織型に対するバイオマーカー探索実験に関しては、上記2つの候補タンパク質のバイオマーカーとしての有用性が不十分な場合、コントロールを中皮セルブロックから中皮と同様の免疫染色結果を示すAdenomatoid tumorに変更し、再度プロテオーム解析を検討する。また、同時に、多施設での中皮腫検体の集積に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付金は概ね予定通り使用した。繰越金に関しては、次年度、マウスおよび試薬の購入に充てる予定である。
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