我々麻酔科医にとって、病的肥大心を有する患者は比較的遭遇頻度が高く、特に心臓手術や近年増加している経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の麻酔管理など心筋虚血再灌流保護を期待する場面も多いと考えられる。心筋保護の失敗は予後の悪化を招く。周術期において心コンディショニング法の臨床応用が発展しない理由として、肥大心を含む病的心における保護法が確立していないことが挙げられる。病的心に対する確実な保護法の確立は、今後の課題であり、臨床応用の拡大に大いに寄与する。したがって、本研究の成果から、肥大心に対する有効な保護法を確立することは、高齢者の心臓手術やTAVIの周術期管理に大きく貢献する。
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