これまでに転移や浸潤したがん細胞が細胞隗となり、微小環境を変貌させ血管新生を促すなど、がん増殖について明らかになっている。またがん細胞は後天的な変化を反映した遺伝子の異常修飾を利用し、一部のケモカイン遺伝子発現を抑えて生体内の新規の血管を誘導することが分かってきた。そこで本研究では周術期に長時間用いる吸入麻酔薬に着目し、その暴露後に血管新生を生じたマウス皮下腫瘍がこのようなケモカイン発現不均衡を生じたかどうかを検証をする。これまでに研究者らは大腸がん細胞株がケモカイン遺伝子を高発現し、移植隗の血管新生を促したことを免疫不全マウスの皮下の異種移植において観察した。そこでこのケモカインのリガンドの一つであるCXCL-12の発現量を調べた。また、このリガンドの発現量の変化に有意な差は見いだせなかった。また、麻酔薬暴露後にがん細胞から発現したケモカインタンパク質は暴露から24時間後に発現量を増加することを同定した。しかし、このケモカインによって生じると予想される走化性は、ボイデンチャンバー法では有意な差を生じなかった。さらにセボフルラン曝露後のこのリガンドのプロモーター領域のメチル化にも変化を生じていないことを同定した。2023年には血管新生に関わる遺伝子やそのタンパク質はセボフルラン曝露から24時間以内にはその発現量を寧ろ低下することを同定した。現在はマウスの組織染色によりケモカインの発現量を調べている。
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