研究課題/領域番号 |
19K09526
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
木下 学 旭川医科大学, 医学部, 教授 (40448064)
|
研究分担者 |
有田 英之 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (60570570)
金村 米博 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (80344175)
橋本 直哉 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90315945)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 膠芽腫 / MRI / 予後 |
研究実績の概要 |
がん治療は初発時に行う一次治療、再発時に行う二次治療、再再発時の三次治療...、というように疾患の進行、再発とともに治療内容を変更することが一般的 である。現在はがんの再発検出は血清腫瘍マーカー検査やCT、MRIを中心とした画像検査に依存している。がん治療内容の変更は上述のような検査によって「再発」が宣言され、その後「次治療」が計画、実行される。本研究では現状の「事後的次治療施行」から、がん「再発」を事前に予測し「予防的・事前的治療」が行えるアルゴリズムの開発を、脳腫瘍の代表格である膠芽腫をモデルとして試みることを目的とする。具体的には、画像、遺伝子、臨床情報を機械学習アルゴリズムで結合することで、がん患者の「未来予測」を可能とすることを目指す。 申請者らは、WHO grade 2, 3の神経膠腫でMRIを用いたradiogenomicsという解析によりIDH遺伝子変異を80%以上の精度で推定することに成功した(Sci Rep. 2018;8(1):11773, Sci Rep. 2019; 9(1):20311)。さらに、最も予後不良である膠芽腫の初診時MRIによる予後推定アルゴリズムの開発にも成功した(Sci Rep. 2019;9(1):14435.)。研究代表者らが開発されたRadiomics技術をもちいて、膠芽腫(最も予後不良な神経膠腫)の予後予測画像バイオマーカーの同定を行った。 その一方で、従来型RadiomicsならびにCNN支援下Radiomicsを用いて低悪性度神経膠腫ならびに膠芽腫の新規コホートで解析し、IDH変異およびpTERT変異の推定ならびに膠芽腫の予後推定精度を検証した。解析対象を推定モデル構築コホートから新規コホートに移行した場合、「学習コホートのバイアス(偏り)」という問題により、推定精度が悪化することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り膠芽腫の予後推定が初診時MRIである程度可能であることを証明できており、研究進捗は極めて順調であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
1)腫瘍の空間的変化解析:腫瘍の3次元空間での変化を鋭敏に捉えることは極めて挑戦的であるが、Nealらが提唱しているDays Gained法を応用することでの解決を試みる予定である。これは撮影日が近接する2つの画像を微分することで、腫瘍の増大傾向あるいは退縮傾向を鋭敏に検出しようとする手法である。本研究課題では画像撮影ごとの 各種画像特徴量の変化も算出し、治療による腫瘍の退縮あるいは治療抵抗性を獲得した腫瘍の増悪の過程を可能な限り鋭敏に検出することを目指す。 2)機械学習:予後モデル構築にはLeast Absolute Shrinkage and Selection Operator (LASSO)やSupport Vector Machine (SVM)を始めとした様々な機械学習を試行し、もっとも予測精度の高いモデルの同定を行う。機械学習は統計プログラミング言語で頻用されるR上に実装することで、構築されたシステムの汎用性を担保す る。 3)過去コホートと新規コホートで解析元データのばらつきと類似性の解析を主成分分析t-SNEで行う:t-SNEでは高次元のデータ集合を2次元または3次元へ配置し、高い確率で類似した集合が近傍に、異なる集合が遠方となるように対応付ける解析手法である。このような解析を行うことで、従来コホートと新規コホートの類似性と非類似性があきらかとなり、解析コホートデータ集合のどの要素が診断精度の低下に寄与しているのかを明らかにすることができる。 4)「学習コホートのバイアス(偏り)」補正による学習のファインチューニング:解析コホートを変更した際に診断精度を低下させている要素を補正、除去することで、解析コホート変更をしても診断精度が低下しないような解析系を確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年に行う予定であった以下の解析を次年度に行うことにしたため、次年度使用額が生じた。 *)広範囲遺伝子解析データ解析凍結検体抽出DNA/RNAを用いて、次世代シークエンサーによる解析をおこなう。これまでの先行研究データなどから、神経膠腫におけるdriverとなる遺伝子を 中心にパネルを作成、target sequencingおよびdeep sequencingによる変異アレル頻度の測定をおこない、遺伝子プロファイルの差を明らかにする。また、DNAのメチル化状態 (Methylation EPIC BeadChipで評価) や、DNAコピー数評価も行なう。また、RNAを用いてmiRNAやmRNAの発現について定量解析も行なう。
|