研究課題
口腔乾燥症は易感染性や創傷治癒不全を引き起こし、歯周疾患を増悪させる。その影響は天然歯周囲に留まらず、インプラント周囲においても同様である可能性が考えられる。インプラント治療を受ける患者は増加しており、また口腔乾燥症罹患者は加齢とともに増加するため、既に超高齢社会に突入した本邦では口腔乾燥症を有する高齢者は飛躍的に増加し、それに伴うインプラント周囲炎の増加は必然である。歯周疾患、インプラント周囲炎そのいずれも細菌感染が大きな原因であるが、これまでの研究により、それぞれに関与する細菌が異なる可能性が示唆されており(Shiba et al. Scientific Reports. 2016)、また、口腔乾燥により細菌叢が変化することも報告されている(Proctor et al. Nat Commun. 2018.)。つまり、口腔乾燥といった口腔環境の変化により細菌叢の変化が生じ、インプラント周囲の炎症をより重篤化、難治化する可能性が考えられる。本研究では、口腔乾燥とインプラント周囲炎の関連を次世代シークエンサーによるRNAシークエンスを含め解析する。これまでに口腔乾燥症およびインプラント周囲炎ラットモデルを確立し、組織学的解析およびメタゲノム解析を行った。その結果、口腔乾燥のみではインプラント周囲の骨吸収を惹起しないが、インプラント周囲へのプラークの蓄積に口腔乾燥を伴うことにより、病態悪化が生じることが明らかとなった。また、口腔乾燥によりインプラント周囲の細菌叢の構成比率が変化することが明らかとなり、インプラント周囲炎増悪の一因である可能性が示唆された。