研究課題/領域番号 |
19K10307
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
北村 信隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (90224972)
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研究分担者 |
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (70221372)
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (80207802)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シロリムス口内炎 / mTOR阻害剤 / 口腔粘膜培養 |
研究実績の概要 |
mTOR阻害剤のシロリムスの最も高頻度に発症する有害事象は口内炎である。シロリムス服用患者の血中トラフ濃度である 0~10 nMにおける口腔粘膜細胞に与える影響は不明である。そこでシロリムス服用患者の血中トラフ濃度である 10 nM以下のシロリムス存在下で口腔粘膜細胞の増殖、成長、接着に及ぼす影響をin vitroで調べた。 口腔粘膜細胞#2610は、ScienCell Research Laboratories社から購入した初代継代株を上皮用無血清培地EpiLife中で増殖させ、第二代の継代細胞ストックを作り凍結した。毎回、ストックした細胞を解凍し、フラスコで5日間培養したものを用いた。蛍光染色、蛍光強度、細胞の成長の観察については、オールインワン顕微鏡を用いた。細胞回転各期の割合の算出は、混合分布の分解解析RプログラムnormalmixEMを用いた。細胞間接着に与える影響を調べるため、E-Cadherin の発現を蛍光抗体法により調べた。その結果、シロリムス存在下で細胞の増殖は強く抑制された。これは、すでに報告があるように、G1休止によると考えられたが、同時にG2/M期が存在していたことから、口腔粘膜細胞はシロリムスにより増殖は抑制されるものの、細胞回転は完全には停止していないことが確認された。Ca 濃度を0.06mMから1.2mMに上昇させると、円形・紡錘形から扁平な大型細胞になるが、シロリムスを添加すると、細胞同士の接着が起こらず、小円形接着細胞にとどまり、この変化が起こりにくいことが示された。すなわち、シロリムス存在下では細胞の縮小と細胞間接着因子である E-Cadherin の発現低下がみられることがわかった。以上のことから、シロリムスの内服により、口腔粘膜上皮細胞は、接着因子の発現障害が起こり、扁平上皮化が障害されるために発症するのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mTOR阻害剤(シロリムス)のヒト口腔粘膜上皮細胞の増殖能に及ぼす影響の評価(in vitro の検索)、すなわち1)ヒト口腔粘膜上皮細胞の培養は、無血清培地(EpiLife)内での培養が成功し、概要に述べた細胞回転の遅延や接着因子の発現障害障害を証明することができたため、進捗はほぼ順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト口腔粘膜ケラチノサイト初代培養細胞を気相液相培養し、カルシウムを添加する。カルシウム濃度を徐々に上昇することにより上皮細胞へ分化させ、それによって口腔粘膜を重層化する。その下で種々の濃度のシロリムス添加による重層口腔粘膜への影響を調べる。具体的には以下の方法で行う。 1.ヒト口腔粘膜上皮細胞(ScienCell)に対して以下の如くFeeder-free 3D培養を行う。 ①培養後0日から4日ではEpiLife培地による液相培養下にて0.06mM Calcium + EGDS supplement添加、②4日から8日にEpiLife培地による液相培養下にて1.2mM Calcium + EGDS supplement添加、③8日から15日にEpiLife培地による気相液相培養下にて1.2mM Calcium + EGDS supplement添加、④15日から36日にEpiLife培地による液相培養下にて1.2mM Calcium + EGDS supplement添加、さらにSirolimus 0、0.1、1.0、10nMを添加する。 2.重層培養した口腔粘膜細胞をインサートからメンブレンと共に切り出し、固定・パラフィン包埋後、HE染色ならびに蛍光免疫染色により重層化の状態を調べる。 3.重層培養した口腔粘膜細胞から各インサートごとに細胞溶解バッファー(Lysis buffer)に溶解し、タンパク質レベルの発現状態をWestern blottingにより調べる。 4.重層培養した口腔粘膜細胞から各インサートごとにRNAを抽出し、等量のtotalRNAを用いてRT-PCRにより遺伝子レベルの発現状態を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度使用予定であったが、新型コロナウイルスの影響により、当該年度中に必要な機材の入手が困難であったため、次年度での購入となった。
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