研究実績の概要 |
本研究は変形性顎関節症による軟骨破壊を防ぐ物質を探索する研究である。我々は以前より顎関節にかかる器械的負荷により軟骨破壊を生じるメカニクスについて検討を行ってきた。機械的刺激はインテグリンーFAKを介して受容されている。このたび我々はカルシニューリンに注目し、それに関与するNFATCを介したメカニクスが軟骨破壊に関与している可能性について検討することとした。 実験1:in vitro実験として、肥大期ATDC5を用いて実験を行っている。軟骨細胞に機械的刺激を付加した場合、その12時間、24時間前に投与したFK506は、50μMの濃度で有意にANGPTL2発現を抑制することが明らかとなった。FK506投与後に、過度な機械的負荷付与後6時間、12時間後で、ANGPTL2, COX2, IL1-β, MMP3,MMP13, Adamts5の遺伝子発現の抑制が確認された。過度な機械的負荷付与により亢進したp-ERK, p-P50, p-Akt, p-P38, p-JNKタンパク発現は、FK506の添加により、抑制されることが明らかとなった。前年度までも同様の結果が出ていたが、本年度にウェスタンブロットの結果の精度向上を図り、良好な結果を得た。軟骨細胞において、過度な機械的刺激によってNFATC1,3,4の発現は有意に亢進し、NFATC2の発現は有意に抑制された。過度な機械的刺激10分後よりNFATc3の脱リン酸化の亢進が認められ、120分まで継続した。トータルNFATc3は過度な機械的刺激開始後120分で亢進が認められた。NFATCのリン酸化は器械的刺激により亢進し、FK506の添加により更に亢進した。FK506はNFATCのリン酸化を引き起こすことでANGPTL2の発現抑制していると考える。 実験2:in vivo実験として、ラットTMJ-OAモデルを使用する。ラット顎関節にFK506もしくはNFATc阻害剤添加し、軟骨保護作用を確認する予定であるが、先行研究として顎関節部皮膚へFK506塗布を行ったものの思わしい結果が得られていないのが現状である。
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