研究実績の概要 |
本研究は変形性顎関節症による軟骨破壊を防ぐ物質を探索する研究である。我々は以前より顎関節にかかる器械的負荷により軟骨破壊を生じるメカニクスについて検討を行ってきた。機械的刺激はインテグリン-FAKを介して受容されている。このたび我々はカルシニューリンに注目し、それに関与するNFATCを介したメカニクスが軟骨破壊に関与している可能性について検討することとした。最終年度としてラットTMJ-OAモデルを使用しFK506の変形性顎関節症の抑制効果を検討した。0.32㎎/kgの濃度で筋注を行った。FK506の体内濃度は24時間で減衰するため毎日1回の投与を10日間行い評価を行った。しかしラットTMJ-OAモデルでは炎症の抑制効果としては有意な差が認められなかった。 研究期間全体を通じて:in vitro実験ではATDC5軟骨細胞に機械的刺激を付加しその後FK506を投与すると、有意にANGPTL2発現を抑制することが明らかとなった。また過度な機械的負荷付与後にFK506を添加するとANGPTL2, COX2, IL1-β,MMP3,MMP13, Adamts5の遺伝子発現の抑制が確認された。また過度な機械的負荷付与により亢進したp-ERK, p-P50, p-Akt, p-P38, p-JNKタンパク発現は、FK506の添加により抑制された。軟骨細胞において過度な機械的刺激によってNFATC1,3,4の発現は有意に亢進しNFATC2の発現は有意に抑制された。過度な機械的刺激10分後よりNFATc3の脱リン酸化の亢進が認められた。FK506の投与はNFATC3の脱リン酸化を抑制しておりそれによって軟骨の抗炎症作用が発揮されていると考えられた。FK506はすでに臨床応用されている薬剤であり、それが現在治療薬のない変形性顎関節症へ適応されれば非常に有意義なことと考える。
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