研究課題
心臓聴診法は最も基本的な身体診察法の一つである。心臓病診察シミュレータを活用し、異なる学習レベルにある学習者(医学科1年次学生、医学科4年次学生、循環器疾患を専門としない医師)のそれぞれに最も適した心臓聴診トレーニング・プログラムを開発することを目的とした。今年度は1年次学生9名、4年次学生148名を対象として、我々が独自に開発した心臓聴診トレーニング・プログラムを実施した。循環器を専門としない医師を対象としたプログラムは、実施予定時期に新型コロナウイルス感染症が拡大したために、実施できなかった。1年生次学生には課外で1.5時間を3回で計4.5時間で、4年次学生には正規の授業時間内の3時間1回でほぼ同一の教育プログラムを心臓病診察シミュレータ(イチロー、京都科学)を用いて実施した。授業内容は、概要の説明、心音に関するミニレクチャー、シミュレータを用いた聴診トレーニング、2回の異なる聴診テスト、振り返りから構成された。2回の聴診テストの結果は次の通りであった。4年次学生の1回目の聴診テストのII音に関する正解率は92.1% 、過剰心音では70.5%、心雑音では80.2%であった。一方、より臨床現場に近い2回目の聴診テストでは、それぞれ71.6%、50.0%、76.4%と低下した。1年次学生では、1回目の聴診テストのII音に関する正解率は100%、過剰心音では70.4%、心雑音では94.4%、2回目の聴診テストでは、それぞれ77.8%、66.7%、77.8%であった。1年次学生と4年次学生の何れも2回目の聴診テストの正解率が低下した。また、1年次学生の正解率は4年次学生の正解率と同等かそれ以上であった。1年次の学生においても時間をかけて実施すれば、心臓聴診トレーニングは可能であり、4年次学生と同等か、それを上回る到達度が得られることが示された。
3: やや遅れている
今年度は1年次学生9名、4年次学生148名を対象として予定通りの教育プログラムを実施できたが、循環器を専門としない医師を対象としたプログラムは、実施予定時期に新型コロナウイルス感染症が拡大したために、行うことができなかった。このために「やや遅れている」と評価した。
2020年度も1年次学生、4年次学生、循環器を専門としない医師を対象とした教育プログラムを実施する予定であるが、新型コロナウイルス感染症が終息しない場合は、リアルタイム・ウェブ・トレーニングに切り替える予定である。本学ではGoogle Meetを使用できる環境にあり、学生も他の授業で本システムに慣れており、支障はないものと考えている。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、予定していた循環器を専門としない医師を対象とした心臓聴診トレーニングが実施できなかったこと、および情報収集のために参加予定としていた日本循環器学会学術大会が延期されたことなどによる。次年度も新型コロナウイルス感染症の影響は避けられないと考えられるため、遠隔トレーニングを実施するために有効に助成金を使用する予定である。
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Tohoku J Exp Med in press
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Tohoku J Exp Med
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doi: 10.1620/tjem.248.253.
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