研究課題/領域番号 |
19K10502
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加賀谷 豊 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90250779)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 心臓聴診 / オンライン / 新型コロナウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
心臓聴診は最も基本的な身体診察法の一つであり、医学生は基本的な心音の異常や心雑音を鑑別できる能力を習得する必要がある。我々は臨床実習参加前の医学科4年生を対象に、心臓病診察シミュレータ、イチローを用いた少人数実習を行ってきた。実習中に実施した小テストで、Ⅱ音、Ⅲ音/Ⅳ音、心雑音の何れに属する音かを予め知らせてから聴かせると正解率が高いが、知らせないとⅡ音とⅢ音/Ⅳ音の正解率が著しく低下することを報告している(J Cardiol. 2017)。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、聴診音を学べるウェブサイトを用いた少人数オンライン心臓聴診実習を実施し、その実施可能性を検討した。医学科4年生133人を7-10人の小グループに分け、ミニレクチャー、聴診実習および聴診テストを「聴くゾウ・ライブラリー」(テレメディカ)とZoomにより、1グループ当たり2時間で実施した。18回の実習のうち、1回は大学内のインターネット環境の不具合で約15分間中断し、1回は同じ理由で完全に中止し補講を実施した。73%の学生が心音や心雑音の音質は良かった、23%がどちらかと言うと良かったと答えた。70%の学生は心音や心雑音を良く理解でき、28%はどちらかと言うと良く理解できたと回答した。53%の学生が心音や心雑音を良く、40%がどちらかと言うと良く聴き分けられたと答えた。77%の学生が実習は満足、21%がどちらかと言うと満足だったと答えた。Ⅱ音、Ⅲ音/Ⅳ音、心雑音の何れに属する音かを予め知らせて聴かせると、正解率はそれぞれ88%、84%、88%だったが、知らせないで出題すると正解率はそれぞれ77%、78%、82%と低下した。以上から、少人数オンライン心臓聴診実習は円滑に実施できる可能性があるが、有効性と限界についてさらに検討を重ねる必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大により、従来通りの対面での心臓病診察シミュレータを用いた実習はできなかった。しかし、これに替わってオンラインによる少人数聴診実習を実施することにより、当初の予定通りではないが、新型コロナウイルス感染症が広がる中で、有効な学習プログラムの開発に着手することが可能であった。少人数オンライン心臓聴診実習は円滑に実施できる可能性があるが、有効性と限界についてさらに検討を重ねる必要があるため、次年度の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の拡大は今後も続くことが予想されることから、従来の対面での心臓病診察シミュレータを用いた実習ではなく、2020年度に実施した「聴くゾウ・ライブラリー」(テレメディカ)とZoomを用いたオンライン心臓聴診実習を行う予定である。有用性を高めたオンラインによる心臓聴診実習プログラムは、今回の新型コロナウイルス感染症が終息した後でも、新たな感染症の拡大時に極めて有用である可能性が高い。2020年度に得られた結果を詳細に分析し、より有用性の高いオンライン心臓聴診実習プログラムに仕上げていく予定である。特に、今年度の研究実施により、ICTを活用した本教育プログラムの有効性と限界について有用なデータが得られたため、これをさらに解析しながら、研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の学会も含め、学会発表や学会参加のための旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により全てがオンライン開催になったため、旅費を使用できなかった。また、従来通りの対面による心臓診察シミュレータを使用した実習を計画していたが、これも新型コロナウイルス感染症拡大のために使用できなくなり、これに伴う消耗品等に研究費を使用しなかった。新型コロナウイルス感染症の拡大は今後も続くことが予想されることから、従来の対面での心臓病診察シミュレータを用いた実習ではなく、2020年度に実施した「聴くゾウ・ライブラリー」(テレメディカ)とZoomを用いたオンライン心臓聴診実習を行う必要がある。オンラインのライセンスの更新やオンライン授業のための設備の充実に研究費を用いる。また、対面での学会発表が可能な状況になった場合は、研究費の一部を旅費にあてる予定である。
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