研究課題/領域番号 |
19K10557
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
和田 泰三 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携准教授 (90378646)
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研究分担者 |
石本 恭子 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (50634945)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アドバンス・ケア・プランニング / 事前指示書 / 高齢者 / エンドオブライフ・ケア / 人工的水分・栄養方法 / 胃瘻 / 有料老人ホーム |
研究実績の概要 |
2021年度も地域在住者や施設入居者を対象とした対面調査を実施することができなかったが、質問紙による調査を継続してアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と事前指示の実態に関する縦断的検討を行った。 2022年1月、ライフ・イン京都入居者188名(平均86.5歳)を対象とした検討では、人生最終段階の療養場所や人工的水分・栄養方法などについて事前指示書を作成したと回答したものは62.2%であった。しかし、事前指示書の記載内容について親族らの承認・署名を得て施設長へ提出していたにもかかわらず、「事前指示書記載内容についてだれかと話し合ったことがある」と回答したものは38.0%にすぎず、2019年の55.6%より減少していた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため親族との面会が制限されていたことや、職員らとの会話の機会が減り、でACPの機会減少に影響した可能性がある。ACPの希望については回答者160名のうち61.3%がエンドオブライフ・ケアの具体的内容について「かかりつけ医や看護師等と話し合いたい」と回答した。2009年より施設独自の事前指示書である「終末期医療に関する要望書」が配付されているが、ACPの機会を求める入居者は過半数にのぼり、将来の意思決定能力低下に備えて医療者や職員らと会話する機会を求める入居者が多い結果であった。事前指示書作成者106名のうち32.1%は記載内容を確認して再度検討したいと回答されていた。健康状態や入居者自身の価値観に変化があった可能性の他、定期的な見直しを希望する高齢者も一定程度存在すると考えられる。事前指示書未作成者55名の検討では、57%のものが書式入手を希望されていた。事前指示書書式の運用に際し、十分なACP機会を確保することが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、地域在住者や施設入居者を対象とした対面調査を実施することができなかったが、質問紙による調査を継続した。また2009年から2020年末までに施設長に提出された事前指示書の記載内容と実際に終末期に実施された人工的水分・栄養方法の相違についてデータ整理をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き高齢者総合機能評価法による地域住民や施設入居者の健康度を測定するとともに、アドバンス・ケア・プランニングや事前指示書に関する住民勉強会、広報活動を継続する。また、事前指示書を提出したものが死亡した場合は記載された本人の価値観が尊重され、希望どおりの医療・介護ケアが実行されていたか否か検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、地域在住者や施設入居者を対象とした対面調査を実施することができなかったため、旅費・研究補助謝金に次年度使用額が生じた。2022年度は地域在住者を対象とした対面調査を予定しているほか、質問紙印刷費用・国際誌投稿のための英文校正費用等に支出する計画である。
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