研究課題/領域番号 |
19K10648
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
勝又 陽太郎 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30624936)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自殺予防 / 慢性自殺傾向 / 自殺の対人関係理論 / 地域精神保健 / 支援モデル / リスクアセスメント / 自殺ハイリスク者 |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性の自殺傾向を抱えた自殺ハイリスク事例に対して地域保健現場で長期間にわたって継続的に支援していくための方法の確立を目指し、次の2つの目的で実施されるものである。一つは、長期的支援で課題となる、自殺リスクのアセスメント精度向上を目指した、自殺生起メカニズムの理論的精緻化である(研究1)。もう一方は、自殺ハイリスク者の地域支援に携わる支援者が、プロセス評価を用いて支援の質の改善を行えるよう、どのような目標を立て、どのような準備や体制整備を行い、どのくらいの期間をかけて、どのようにリスクアセスメントを行い、どのような方法を用いて支援を行ったらよいのかといった一連の支援のモデルを構築することである(研究2)。
令和2年度研究では、令和元年度研究に引き続き、研究1の一環として自殺の生起メカニズムに関する文献レビューを行った。特に近年の自殺メカニズムの説明として世界的に注目が集まっているideation-to-action framework(Klonsky & May, 2014) について情報収集を行った。
また、研究2の一環として、令和元年度研究において研究協力体制を構築した新潟県内の一つの自治体の職員に対してオンラインでインタビュー調査を実施し、プログラム評価の方法に準拠する形で、自殺ハイリスク者に対する地域支援活動に関する仮説的なロジックモデルを生成した。その結果、地域での自殺ハイリスク者のリスク低下が最終的なゴールとして設定され、サブゴールとして「支援対象者が必要な支援につながり続ける」、「支援者/チームの対応力向上」、「支援者/チームのモチベーション維持」の3つが確認された。さらに、これらのサブゴールを達成するための資源投入や活動として、研修等の実施、後方支援・チーム内でのケース検討、支援者のポストベンションが関連付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年4月より研究代表者の所属が変更となったため、従来の研究フィールドとの連携がとりづらくなった。また、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、研究代表者の出張が難しくなったことに加え、本研究の研究対象としている地域保健部局の様々なリソースが感染症対策の方に大きく配分されてしまっており、各自治体の自殺ハイリスク者対策の優先順位が相対的に低下し、研究の協力が得られづらくなっている。さらに、当初予定していた一般地域住民に対する自殺関連のWeb調査については、人々の自殺関連行動やメンタルヘルスの状態が、長引くコロナ禍の影響を大きく受けてしまっている可能性が高く、データに大きな歪みが生じる恐れがあるため、現状では大規模調査を行うことが難しい。
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今後の研究の推進方策 |
研究1については、当初の調査予定を一部後ろ倒しにして、新型コロナウィルスの感染拡大が落ち着いた後に、あらためてWeb調査等を計画・実施する。 研究2については、すでに研究の協力体制が確立されている自治体との間で、オンライン会議システムを用いたオンデマンドの後方支援を中心に行いながら、自殺ハイリスク者の地域支援モデルの構築および評価を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、学会出張の旅費などが使用できなかった。また、令和2年度計画でモニター会社に委託して実施する予定であったWeb調査が実施できなかった。これらの理由により次年度使用額が生じたが、新型コロナウィルスの感染拡大が落ち着いた後にWeb調査を実施するとともに、学会旅費等で予算を使用する予定である。
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