研究課題/領域番号 |
19K10649
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
荒井 孝子 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (90405580)
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研究分担者 |
東野 定律 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (60419009)
武田 英孝 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 教授 (70245489)
池田 俊也 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (90193200)
BABAYEV TAMERLAN 国際医療福祉大学, 医学部, 助教 (30810874) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 推算GFR / CKD / クレアチニン / シスタチンC |
研究実績の概要 |
平成30年4月から令和3年3月までの期間にA施設でドック健診を受診したのべ70,446名のうち、血清クレアチニン値を用いた推算糸球体濾過量(eGFRcre)と血清シスタチンCを用いた推算糸球体濾過量(eGFRcys)の乖離の実際と、その特徴について検討した。シスタチンCのデータがある62,361例を対象とし、eGFRcysのほうが高値になった例について検討した。そのうち欠損値があるデータを除外した60,708例を対象として、小さい乖離群、平均的な乖離群、大きい乖離群の3群に分類した。eGFRcreとeGFRcysの乖離と各因子(年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖、HbA1c、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non HDLコレステロール、Cre、Cys、eGFRcre、eGFRcys、尿酸、体脂肪率、尿蛋白、BMI、既往歴の有無)と乖離の関連について調べた。統計解析は、一元配置分散分析による多重比較と、χ2検定と、重回帰分析を行った。 eGFR差の分布より、eGFRが60mL/分/㎡以下では乖離が小さく、60mL/分/㎡以上で乖離が大きくなっていた。小さい乖離群から大きい乖離群にかけて女性、若年者(60歳未満)の割合が高くなり、既往歴の有病率は低くなり、BMI分類は25未満の割合が高く、メタボリックシンドローム判定では該当者の割合が低くかった。血圧や血液検査データの平均値では3群で全て正常範囲内であったが、大きい乖離群が最も良好な値であった。重回帰分析では、乖離に影響を与える因子として性別が挙げられたが、予測式の精度が悪く統計的に妥当といえなかった。今回は乖離が大きくなる因子は女性であることが示され、乖離が大きい群の特徴として若年者であること、既往歴の有病率が低いこと、検査データが正常であること、やせや標準体型などが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成21年4月~令和元年7月までに、A施設の人間ドックを受診した全例を対象に分析を進めている。この分析において、受診者の年齢、血圧、既往歴、生活習慣、各種検査値のうちどの因子がeGFR低下に関連するかを分析できる十分なデータを得られている。研究代表者および共同研究者や連携研究者と話し合いながら研究を進めている。初回受診時、初回から2年経過した受診データ、最終受診時のデータ比較しながら解析をすすめた結果、正常範囲内であっても、確実に経年変化が起こり、各因子は悪化していることがわかった。 シスタチンCとクレアチニンによるeGFR値については、現在、その特徴について検討しているが、乖離の特徴や男女差、若年者におけるはずれ値を含めた検討が必要である。今回までの分析で得られた有意な研究結果については、今年度の日本人間ドック学会総会にて3演題を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、集団全体の初回受診者集団、複数回受診者集団における初回、最終回の解析を総合的に実施する。そのうち、初回受診時、最終回受診時における集団特性を明らかにするとともに、集団ごとに年齢階層別、経年変化別の解析を実施する。同様に初回から5年および5年以上の受診フォローを行っている例を対象として抽出し、eGFRの低下と尿タンパク出現との関係、eGFRを低下させる因子の詳細について比較分析する。そのうえで、この集団をeGFRの経年変化によりeGFRが低下している例、ほぼ変化が見られなかった例の2群に分け、多変量解析を行う。 同時に、eGFRcreatに加えeGFRcysを測定したケースを対象に分析する。クレアチニンから算出されるeGFRcreatとシスタチンCから算出されるeGFRcysの値はほぼ一致するが、臨床的観察や人間ドックデータから時に数値の乖離が経験される。この乖離が、男女差、筋肉量、運動量の相違によるものか否かを検討するために、BMI、体脂肪率、CPK値などの種々のパラメータとの分析により、どのような場合に乖離がみられるのかeGFR60を基準として検討する。また、シスタチンCとクレアチニンによるeGFR値を比較検討して、その成果を総合的に評価し、最終的に腎機能を維持するための生活習慣指導、保健指導に有益なデータとなりうるよう解析し、いわゆる健常者において、何がeGFRの低下をきたす要因として強いかを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度に行う学会発表における旅費の支出および研究を実施するにあたっての旅費および少額備品、研究の遂行に必要な物品購入、人件費等を適正に使用する。
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