本研究は、ゲノム網羅的な遺伝情報からがんの多因子遺伝的なリスクスコア(genome-wide polygenic risk score)を開発し、現在の「日本人のためのがんリスクチェックツール < https://epi.ncc.go.jp/riskcheck/>」のアルゴリズムとなっている環境要因だけで構成されたがん罹患リスク予測モデルの改善を図ることを目的としている。ゲノム網羅的な解析をもとに遺伝的リスクスコアの開発を行う際、有意な関連を示す遺伝子多型だけを用いる手法は比較的良く用いられているが、関連が示唆される遺伝子多型まで含めて、より多因子遺伝的なリスクスコアを開発しようとする点が、本研究の学術的特徴である。具体的には、がんのゲノム網羅的な解析で、有意な関連とする基準を P< 5.0×10-8 から段階的に緩め、がんとの関連が示唆される遺伝子多型数を増加させながら、複数の多因子遺伝的なリスクスコアを構築する。2021年度の研究により、がんの持つ多因子遺伝性を最もよく反映すると考えられるP値を定め、前年度までに開発した複数のリスクスコアの中から一つの多因子遺伝的なリスクスコアを選択した。続いて、選択した多因子遺伝的なリスクスコアを環境要因だけで構成されたがん罹患リスク予測モデルに追加し、その予測能の改善を評価している。
|