研究実績の概要 |
本研究は,COVID-19のために調査を延期してきたが,2023年度に調査を実施した。市や関係各所と調整を行い,X県Y市における65歳以上の高齢者約11,000人を対象として悉皆調査を実施した。 また,これまでに実施した調査から16年半の追跡調査からみた老老介護が被介護者の生命予後に与える影響について発表した。従前,老老介護で介護者を対象にした研究はあるが,被介護者を長期的に追跡した研究は殆どみられないため,本研究では介護者と被介護者がともに65歳以上である老老介護を対象として,性別に被介護者の生命予後を明らかにした。 2006年にX県Y市で高齢者総合健康調査を実施し7,413名のうち5,927名から回答を得てADL無回答者を除外した5,484名(男性2,327名,女性3,157名)を分析対象とし,2023年2月28日までの転出および死亡を追跡した。生存変数は人日(Max 6,025日),状態変数は生存および転出を0,死亡を1とし,「A介護保険サービスの利用なし・介護の必要なし」,「B介護保険サービスの利用なし・家族や親族等介護」,「C介護保険サービスの利用なし・老老介護」,「D介護保険サービスを利用中」別に各Modelで生命予後に対するHazard Ratioおよび95% Confidence limitsを性別に求めた。 地域高齢者の老老介護は被介護者男性の生命予後に影響を及ぼす傾向が明らかとなった。先行研究で老老介護は介護者に負担があることは明らかになっているが,被介護者にとっても不慣れな老老介護は不安や多様な負担があると推察される。家族や夫婦の絆以上に,被介護者のニーズに合わせて適切なサービスを受けることの重要性が示唆された。
|