研究課題/領域番号 |
19K10841
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
戸田 登美子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 講師 (90512658)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化的感受性 / 尺度開発 / 看護能力 / イスラム教 |
研究実績の概要 |
近年、日本ではインドネシアなど、イスラム圏からの在留者が増加し、新型コロナウイルス流行下においても在留者数は殆ど減少していない。医療機関においてはイスラム教患者への適切な看護が求められるが、イスラム教に関する看護研究は、イスラム教患者への事例紹介が散見される程度である。よって、本研究では、イスラム教患者に対応する看護師の看護実践能力指標及び看護ケア教材を開発することを目的とする。 2020年度は、前年度に開発した看護実践能力指標の原案の妥当性・信頼性を検証し、指標を完成させた。都市部の医療機関に勤務する看護師を対象に原案の質問紙調査を行い、302部を回収した(回収率45.6%)。有効回答とした277部を分析した結果、看護実践能力指標は、1.属性、2.文化・宗教に関する知識及び実践、3.看護における文化的感受性、4.自由記載 の4部構成となった。なお、2.文化・宗教に関する知識及び実践は、1)基本知識を問う設問、2)臨床ケアに関わる設問、3)実践に関する設問で構成され、3.看護における文化的感受性は、探索的因子分析の結果、29項目6因子構造となり、内部一貫性や再現し、併存妥当性が確認された。 質問紙調査は在留外国人が多く居住する都市部の医療機関の看護師を対象としたが、イスラム教患者の対応経験のある回答者は全体の約1割であり、文化・宗教の知識を問う設問では正答率の低い設問が散見された。しかし、文化・宗教に関する基本知識の高得点群が、イスラム教患者に対する困難感が有意に低いことが明らかとなった。また、臨床経験の長さと文化的感受性の高さとに相関がなかったことから、臨床経験の浅い時期より文化・宗教に関する基本的知識を獲得する重要性が示唆された。 同指標は改善の余地があるが、今後、精選した上で広く公開し、看護職のイスラム教の理解、ひいては看護の質向上をはかる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2019年度に看護ケア教材を開発、2020年度に看護実践能力指標を開発する予定だったが、2019年度に能力指標の原案を開発し、2020年度に指標を完成させた。看護ケア教材の開発にも着手する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い医療状況が逼迫し、質問紙調査の実施に時間を要したため、看護ケア教材の開発には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に開発した看護実践能力指標に基づき、看護ケア教材の開発に着手する。同能力指標は、医療者を対象としたインタビューや質問紙調査結果を基に開発したが、看護ケア教材の開発に際しては、イスラム教徒へのインタビュー調査を予定している。また、看護ケア教材開発後は、開発済の同指標と合わせてこれらを公開し、本研究を終了する。 新型コロナウイルス感染症の影響により、対面でのインタビューやワークショップの開催は困難と思われるため、実施方法や時期については再考し、柔軟に対応していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の予算には、看護ケア教材の開発の費用としてインタビュー協力者への謝金やデータ入力費、及び学会発表旅費を計上していた。しかし、看護ケア教材の開発に着手できなかったこと、また新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックにより学会が中止またはオンライン開催となり渡航費を要さなかったことから、2020年度ではこれらの費用を使用せず、繰越すこととなった。なお、当該予算は、翌2021年度に看護ケア教材開発及び学会等参加費として使用する予定である。
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