研究課題/領域番号 |
19K10868
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
心光 世津子 武庫川女子大学, 看護学部, 准教授 (60432499)
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研究分担者 |
山中 浩司 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40230510)
霜田 求 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (90243138)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己決定支援 / 意思決定支援 / 精神障害者 / 精神科病棟看護 / 精神科看護師 |
研究実績の概要 |
本研究は,学際的アプローチにより精神科病棟看護における自己決定支援に必要となる視点および条件を明らかにすることを目的としている。4年間の研究期間で,①エスノグラフィの手法を用いて,訪問看護実践とも比較しながら精神科病棟看護師の自己決定支援についての認識とその実践を看護学・社会学・倫理学的観点,他職種・当事者の視点から分析し(第1段階調査),②アクションリサーチの手法を用いて,看護師への知見のフィードバックを行いその反応を分析する(第2段階調査)。この2つの調査により,さまざまな精神科病棟看護に通底する自己決定支援モデル構築のための課題を明らかにしようとしている。 初年度にあたる2019年度は,研究機関において研究課題の倫理審査を受審し,その承認を得たのち,第1段階調査のデータ収集に着手した。 近畿地方の精神科病棟および精神科特化型訪問看護ステーションにおいて,精神科病棟勤務経験(または精神科訪問看護経験)3年以上の看護師の看護場面の参与観察とインタビューを行うことで,精神科看護師の自己決定支援の実際とその認識についてデータ収集を行った。これにより,病棟看護でも訪問看護でも「セルフケア支援」や「命にかかわる/かかわらないの線引き」といったゆるやかに共通した視点がありつつも,看護師の看護観・価値観,患者の状態,病棟での治療上の制限やルール,制限のない在宅環境で過ごすための約束事等といった個人・環境要因でその支援内容は大きく異なっていた。 これらのデータ収集状況とその内容については,研究会議にて研究分担者と共有し,今後の分析方法や昨今の感染拡大による課題について検討を行った。 2年目も引き続き第1段階調査を行い,得られた知見や成果を公表していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,研究協力機関管理者のご協力により,病棟においては3精神科病棟(急性期,亜急性期,地域移行機能強化病棟)での参与観察をし,病棟看護師6名にインタビューをすることができた。また,訪問看護については2施設の2名に看護場面の参与観察とインタビューを行うことができた。この調査数は当初の計画よりも少し早く,おおむね順調に進んでいる状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の2020年度についても,引き続き第1段階調査のデータ収集および分析を継続する予定である。しかしながら,研究代表者が所属機関を変更したことに伴う倫理審査再受審および調査協力依頼施設の探索の必要性があることに加え,新型コロナウイルスの感染拡大のためデータ収集過程における感染対策の検討が必要となる。 前者については,年度の前半にて手続きを順次進めていく。後者については,本書類提出時点において多くの施設が感染症対応のため面会を制限したり,部外者の出入りを制限したりしている状況がある。まずは,緊急事態宣言の終了を待ち,データ収集予定地域での感染状況をみながら可能な限りの対策を検討し,調査協力依頼施設の管理者と綿密な打ち合わせを行っていく。 本研究は対面的なデータ収集方法によることもあり,今後の研究推進においては,新型コロナウイルス感染症による社会情勢に大きく影響されることは必至である。研究協力者の安全を最優先にし,年度後半に入っても今後同じ手法でのデータ収集が困難と判断される場合は,研究期間内に研究目的を達成するために,遠隔でのデータ収集など,状況に対応できる方法を柔軟に模索する。遠隔地にいる分担研究者や研究協力者との打ち合わせにおいては,個人情報保護に留意しつつ積極的に遠隔会議システムなどICTの活用をしていく。 また,3年目以降には第1段階調査を終え,第2段階として研究知見の学際的検討や現場へのフィードバックを行っていく予定であるが,感染対策を長期的視点で見据え,柔軟に取りうる対策を見極めて研究を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時は,第1段階調査を2019~2021年度にかけて実施するが,初年度に文献検討と並行してデータ収集を行う予定であった。しかし,倫理申請承認後非常に速やかに研究協力を得ることができ,想定外にスムーズにデータ収集が開始できた。このためデータ収集やそのための調整に一時的に集中的に注力することが必要となり文献検討は次年度に持ち越した。また同理由で研究分担者との研究会議も1回にとどまった。 翌年度は,年度前半の初年度データの分析を行う時期に改めて文献検討を並行して進める。研究会議についても今後の研究推進方策の検討を緊密に行えるよう,早急にICT機器を整備し新型コロナウイルスの感染対策をしつつより効率化して実施していく。
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