研究課題/領域番号 |
19K10955
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
内田 雅子 高知県立大学, 看護学部, 教授 (60326494)
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研究分担者 |
藤村 眞紀 高知県立大学, 看護学部, 助教 (90882936)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性病者 / ケア・コーディネーション / プログラム開発 / 事例研究法 / 実践理論 / アカデミック・プラクティス |
研究実績の概要 |
本研究は、近年の保健医療システムの変化を踏まえ、慢性病者のセルフケアを継続的に支援するための慢性看護実践を、地域の広域的な課題解決を視野に入れた、ケア・コーディネーションとして実践理論を構築することを目的としている。本研究の構造は、①ケア・コーディネーションプログラムの開発・評価、②人材育成プログラムの開発・評価、③ケア・コーディネーションの実践理論構築、の3つを柱とし、これらを循環的に進める計画である。4年目は、新型コロナ感染対応にあたる保健医療機関の負担状況を踏まえ、医療機関内のケア・コーディネーションプログラムについて、重症化予防と迅速かつ効果的なハイリスク者の発見と多職種ケアの調整という観点から検討を進めた。 ①②:慢性病者中心のケア・コーディネーションと人材育成のプログラムは、ケア・コーディネーションの枠組みへ疾病管理の考え方を組み込んだ階層プログラムを構造化した。これにより、看護師は慢性病者を重症化予防と社会的決定要因による健康問題の複雑度という生物医学的視点と心理社会的視点から理解し、ハイリスク者を早期発見することが可能になる。さらに、受診者を問題の複雑度により層別化することで、自施設の対象集団の特徴が明確化し、複雑度に応じた多職種協働ケアのメニューを予め開発しておくことが可能になる。③:慢性病者中心のケア・コーディネーションの実践理論は、病みの軌跡看護モデルと慢性看護ケアモデルをフレームとして検討しているが、地域生活と保健医療を調整する観点として患者中心からパーソンセンタードへ概念を修正するとともに、新たに発達段階で異なる社会経済的影響を踏まえたケア課題や地域の保健医療福祉従事者の減少といった今日的課題を統合する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
学内の新型コロナ感染予防対策が部分的に緩和されたことで、校務は遠隔・対面・ハイブリッド実施など複雑多様な手段の調整が必要になり、前年度以上に多忙となった。 また、医療機関は感染者対応の業務負担と離職者増加により、プログラムを推進する物理的余裕がない状況であった。 そのためプログラムの中間評価や先進地域での情報収集は、感染拡大時期と重なったため延期となるなど、感染状況に応じた対外的調査活動がタイムリーに調整・実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、県内の医療機関で試行しているプログラムを評価するため、各医療機関におけるプログラムの実装化にかかるプロセスに関する情報収集を予定している。国内外の先進事例調査は、感染状況と調査対象機関の状況等を考慮して可能な範囲で実施していく。ケア・コーディネーションの事例は、慢性病者と看護師の関係だけでなく、社会環境・医療環境などの文化的影響までを視野に入れた情報収集と解釈が必要であるため、web会議システムによる遠隔調査では情報がかなり不足する。しかし、学内外のスケジュール調整が容易ではないため、可能な範囲で現地調査だけでなく遠隔調査も取り入れ、さらに当該事例に関する文献・資料を活用して多面的な情報収集を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、本研究の対象者が新コロナ感染拡大とそれによる医療負荷の増大によりストレスフルな勤務状況にあったこと、研究者の校務多忙と委託業務のスケジュールが感染拡大により度々修正しなければならない事態となったこと、そのため国内外の先進地区・事例の情報収集や集合会議開催の依頼・実施を進めることができなかったことが主な要因である。 使用計画:2023年5月に、WHOも日本政府も新型コロナ「緊急事態宣言」終了を発表したことから、医療関係者への調査依頼も徐々に可能になると考える。しかし、医療機関では、今後も感染への警戒と不安定な状況は続くと思われる。次年度は状況が許せば現地訪問し、不可能であればWebによる会議・調査を実施することで予算を使用できると考えている。
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