研究課題/領域番号 |
19K10982
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
山下 早苗 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (40382444)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 看護倫理 / 小児 / 看護師 / 倫理的能力 / 対話 / 語る文化の醸成 |
研究実績の概要 |
本研究は、臨床現場(静岡県立こども病院看護部)との協働研究である。これまで、新型コロナウイルス(COVID19)感染症拡大の影響を受け、臨床とともに研究を遂行することに大幅な滞りが生じ、当初4ヵ年計画であったが計画修正を余儀なく強いられ遅延したため、研究期間を延長した。 本研究における学術的「問い」は、「『徳の倫理』『原則の倫理』『ケアの倫理』を用いたアプローチは、小児を対象とする看護師の倫理的能力を促進することができるか?」である。 静岡県立こども病院における本研究の協力病棟(ICU病棟・北4病棟)である病棟管理者およびファシリテー タを担う看護師と定期的な検討会議を開催し、2回/月の看護倫理カンファレンスに参加し、看護師の倫理的能力を支援した。病棟で開催する看護倫理カンファレンスは、ナースコールが頻回な時間帯で開催されることが多く、そのような環境下では集中力に欠け、継続が難しかった。忌憚ない対話においては、お茶を飲みながらなど安心と安全が確保された環境と人間関係の中で可能になると考えられ、環境調整や参集の仕方・時間帯の変更が必要であることがわかった。また、対話になりにくい現状として、話題とするテーマにも問題があり、看護の喜びや困りごとを率直に対話する中に倫理的苦悩や倫理的ジレンマが浮かび上がることがわかった。論理的能力を促進するツールとして、倫理綱領や『原則の倫理』に照らした検討のみでは対話は難しく、『徳の倫理』『ケアの倫理』のアプローチが欠かせない。なお、実践にあたっては協力病棟スタッフの理解を得ながら遂行する必要があり、病棟管理者およびファシリテー タを担う看護師が試行することになった。その効果を、次年度は道徳的苦悩尺度(日本語版)を用いて評価する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和5年度は学部長の役割を担うことになり、本務のエフォートが高くなったため研究を推進する時間を確保することが難しかった。
|
今後の研究の推進方策 |
倫理的能力を促進するツールとして、①看護の喜びや困りごとを語りの話題とし、お茶を飲みながらの環境下でゆっくりと話すことを試みる。②倫理的苦悩や倫理的ジレンマを抱えている看護師のレジリエンスを発揮するための語る文化を醸成する必要があり、看護の喜びや困りごとを率直に対話している状況について、国内外のこども専門病院を視察調査する。 また、看護師への倫理的支援と効果を検証するために、道徳的苦悩尺度を用いて評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は、看護学部長の役割を担うことになり本務のエフォート率が高くなった。そのため、研究を遂行する時間を確保することができず、研究費を計画的に運用することができなかった。 令和6年度も任期上、学部長役割があるため、国内外の病院視察調査は静岡県立こども病院の協力病棟である看護師長や看護師に依頼し、研究を推進する計画である。
|