研究課題/領域番号 |
19K11143
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
高橋 和子 宮城大学, 看護学群, 教授 (00315574)
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研究分担者 |
大熊 恵子 宮城大学, 看護学群, 教授 (40284715)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 新任訪問看護師 / 暴力 / ハラスメント / 教育プログラム / 組織間協働 |
研究実績の概要 |
地域包括ケアシステム構築において、訪問看護師の確保・育成が重要課題となっている。一方で、訪問看護師は、訪問者として療養者宅に入ることから、プライベート空間の中で発生する様々なトラブルに巻き込まれるリスクも負っており、訪問看護師の約5割もしくはそれ以上が、療養者・その家族等からの暴力を受けていると報告されている。 そのため、本研究では、療養者・家族から暴力やハラスメントをより受けやすい状況にあると推察される新任訪問看護師を対象とした暴力・ハラスメント防止教育プログラムを開発することを目的とした。 プログラム開発にあたり、文献検討および積極的に療養者・家族からの暴力・ハラスメントの防止に取り組んでいる病院等の専門職への聞き取りにより、暴力・ハラスメントの対応方法を把握することとした。令和2年度は、医学中央雑誌WEB版および国立情報学研究所CiNii Articlesを用いて抽出した28文献を対象に分析した結果を第23回北日本看護学会学術集会にて発表した。文献検討の結果では、訪問看護における療養者・家族からの暴力・ハラスメントに対する組織的な対応として、『対策組織の立ち上げ』『検討会の開催』『カンファレンスの実施』『該当事例の報告書の作成』『被害にあったスタッフへの支援』『関係職種との連携による対応』『職場の安全対策の強化』『訪問看護師の教育・啓発』『暴力等対策指針の作成』が挙げられた。訪問看護師自身による対応では、『暴力を判断する力の向上』『自身を守れる対応の実践』『客観的な状況の把握』『上司への報告』が挙げられた。訪問看護師自身が、暴力・ハラスメントに巻き込まれない対応の必要性が述べられていた。 訪問看護師による個々の対応、訪問看護ステーションによる組織的な対応、地域の関係職種の連携による対応体制を構築することが、今後の暴力・ハラスメント対策として重要となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和元年度は、積極的に療養者・家族からの暴力・ハラスメントの防止に取り組んでいる病院等の専門職に聞き取り調査を依頼し、実施状況を把握する計画としていたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、実施が困難となった。令和2年度に行うよう計画を再調整したが、さらに感染症の拡大の影響は深刻となった。医療現場の状況を把握しながら、可能な準備を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に計画していた病院等の専門職の聞き取りについて、感染症対策を強化した上で、対応可能なところから進める。先駆的に暴力・ハラスメントに取り組んでいる病院看護師および暴力・ハラスメントに対する看護職の支援的な立場にある組織の専門職、研究者等からの現状把握を行う。把握した内容と文献検討の結果と合せて、効果的な防止対応を類型化し、訪問看護においても応用できる療養者・家族からの暴力・ハラスメントの対応方法について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者・家族からの暴力・ハラスメントの防止に取り組んでいる病院等の専門職の聞き取り調査および学会参加・発表のための旅費を確保していたが、実施に至らなかったため、残額となった。 現状把握の聞き取りは、遠隔システムを用いての対応の可能性も見えてきたため、承諾を得られたところから計画を遂行する。また、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を見ながら、県外での聞き取り調査および、学会参加による情報収集を行う。
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