研究課題/領域番号 |
19K11252
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
山地 佳代 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (80285345)
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研究分担者 |
長畑 多代 大阪府立大学, 看護学研究科, 教授 (60285327)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知症 / アドボカシー / 高齢者施設 / 日常生活支援 / ガイドライン / 尺度開発 / 非ランダム化比較試験 |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度末に開始した介入研究を継続して行った。しかし研究協力施設周辺地域での新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、介入途中で研究を一時中断せざるを得なくなった。研究協力施設の担当者と情報を共有し、研究協力施設及び研究対象者の負担を考慮した上で、感染防止対策を講じた実行可能な研究方法を検討した結果、介入期間が当初計画よりも延長し、介入方法の一部修正を行ったが再開することに至った。 特別養護老人ホーム1施設に勤務する看護職及び介護職を、アドボカシーガイドラインを配布し説明を受講してもらう説明群(33名)とアドボカシーガイドラインの説明を受けた後日、自己のアドボカシー実践について振り返り、できていることや困っていることについて小グループで話し合う研修会に参加してもらう説明群(33名)の2群に割り付けた。研修群の1名が途中で脱落し、最終65名となった。それぞれの研究参加者の介入前後に、昨年度開発し信頼性と妥当性が検証された「認知症高齢者の権利を守る日常生活支援尺度」を測定した。「認知症高齢者の権利を守る日常生活支援尺度」は24点から144点の範囲をとり、得点が高いほどアドボカシー実践頻度の高さを示すものである。ベースラインでは両群の属性および尺度得点に有意差はみられなかった。介入前後において、説明群は100.4±8.55点から107.9±11.76点(p<0.01)へ、研修群は104.4±10.92点から111.7±13.77点(p<0.01)へと両群とも有意に増加した。しかし二元配置分散分析の結果、説明群と介入群に交互作用はみられなかった。現在、研修会での発言内容や研修会後のインタビュー結果等の質的データの分析を進めており、アドボカシーガイドラインの効果やより効果的な活用方法に向けた検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大によって介入研究を途中で一時中断した。しかしその後感染拡大状況をみながら研究協力施設との調整や介入方法の再検討を重ね、介入期間の延長や介入方法の一部変更はあったものの介入を再開することができたため、進捗状況としてはやや遅れている状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
質的データの分析結果を検討し、量的データの分析結果と合わせてアドボカシーガイドラインの効果や交互作用がみられなかった考察を進める。アドボカシーガイドラインを受取って説明を聞く説明会に参加しただけでも、認知症高齢者の日常生活支援尺度得点が有意に向上した結果から、コロナ禍において勉強会や研修会の機会が減少し、また外部との交流も少なく閉鎖的になった状況であっても、アドボカシーガイドラインを活用することによってケア専門職が日常生活支援の際に認知症高齢者の権利を守るアドボカシー実践を意思決定することに寄与できる可能性が示唆されたため、分析を進めアドボカシーガイドラインの効果と効果的な活用方法について提言する。また今後は今までの研究成果をまとめ、国内および海外の学会等へ報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う研究中断や研究方法の一部変更によって研究協力施設への訪問が減少したことや、情報収集のための学会への参加がオンライン開催となったことなどから、旅費の支出が減じた。次年度は研究成果を国内および海外に報告するための専門的知識の提供やデータ整理補助、通信費等に充てる計画である。
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