研究課題
安定期にある慢性心不全患者に対して運動療法を実施することにより、運動耐容能、生活の質、長期予後など多くの有益な効果が得られることが報告されている。また一定期間の運動療法や、その際に適切な指導が行われた場合には外来での監視下運動療法の後、自宅での非監視下運動療法でもその効果は持続すると言われている。しかし進行する本邦の高齢化の中、高齢心不全患者が増加している現状で非監視下の運動療法にどれほどの効果があるのかは知られていない。われわれは高齢慢性心不全患者への監視下心臓リハビリテーション (心リハ) の中断後は早期に運動耐容能が増悪するとの仮説を検証するために、高齢心不全患者を心リハ中断群と心リハ継続群にランダムに振り分け、運動耐容能等を比較検討する。現在まで平均年齢75±10歳の高齢心不全患者8人に外来心リハを行い、心リハの中断3か月後に再度評価を行った。嫌気性代謝閾値 (AT) 時の酸素摂取量は12.4±1.4mL/kg/minから9.8±2.0mL/kg/minに低下し、AT時の負荷量は58.6±14.1ワットから41.3±13.4ワットに低下していた。BNPは46pg/mLから98pg/mLに増加していた。またこれらの値は監視下心リハを再開した1か月後には中止前のレベルに復していた。運動療法は適切な指導により非監視下でも効果が持続すると言われているが、高齢者に関しては監視下心リハを中断すると運動耐容能や慢性心不全のコントロールが悪化する可能性が示唆された。この仮説および中間結果から高齢者における監視下運動療法の保険上の延長や、監視型と非監視型の中間的な心リハの整備、さらにはITなどを用いた簡便かつ有効な非監視型心リハの研究、普及などが望まれる。
4: 遅れている
目標対象者数は心リハ中断群と継続群でそれぞれ50人ずつであるが、Covid-19により外来心リハが長期間中断した。最近になりようやく外来心リハが再開したものの、依然患者さんの外来心リハへの意向が低い状態が続いている。
Covid-19の外来心リハ制限が解けた時点からエントリーを再開したが、外来心リハの患者さんの意向が低下している。関連施設との連携も検討する。
エントリー数が増えなかったので、物品への支出が少なかった。今後エントリーが増えた際に数種の解析ソフト、PC、消耗品費が必要となるので、これに未使用額分が使われる予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Am J Physiol Heart Circ Physiol
巻: 319 ページ: H694-H704
10.1152/ajpheart.00279.2020.