研究課題
基盤研究(C)
本研究は、欠乏症を発症しない程度の短期的な体内のチアミン量の低下が、チアミンを補酵素とするピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)の活性および糖質・脂質代謝に与える影響を動物実験にて明らかにすることを目的とした。その結果、体内のチアミン量が低下しても、安静時、間欠的高強度運動時、低強度持久運動時のいずれにおいてもPDC活性は変化しないことが示唆された。さらに、同条件下でエネルギー源が糖質または脂質に偏った場合でも、糖質及び脂質代謝は維持され、短期的な体内チアミン量低下の影響がないことが示された。
スポーツ栄養学
チアミン研究は歴史的に、長期の欠乏により生じる欠乏症の治療を目的として始まったが、現代ではそれほど長期のチアミン不足に陥ることは稀である。そのため体内チアミンの短期的な不足の影響は精査されてこなかったが、本研究により水溶性ビタミンであるチアミンも不足が短期であれば糖質および脂質代謝に影響を及ぼす可能性が低いことが示唆された。このことは盲目的なビタミン剤の摂取を抑制し、給食の現場における献立作成の自由度を増すことにもつながるものと考えられる。