研究課題/領域番号 |
19K11514
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
山辺 芳 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学部, 先任研究員 (00346470)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スキージャンプ / 空気力 / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
全日本ナショナルチームに参加している女子スキージャンプ選手および男子コンバインド選手を対象に,風洞実験室において無風及び有風(25 m/s)の気流環境下で模擬踏み切り動作(シミュレーションジャンプ)を行わせ,側面から高速度ビデオカメラによって撮影した。撮影された映像資料の画像解析を行い,身体重心の速度および姿勢変化の基礎資料を得た。風洞内に設置された床反力計上で踏み切り動作を行わせることによって,選手が発揮した床反力も同時に測定した。得られた高速度ビデオ映像の画像解析によって、踏み切り動作時間と最大上昇速度のデータを得た。これまでに得られた結果から,無風時に比べて有風条件においては,揚力の影響と考えられる1)上昇速度の増大,2)踏み切り時間の減少が観察される場合と,そうでない場合があることが分かった。また本研究の課題である性差について,性差の最も大きな特徴である形態の大きさおよび体質量の影響を検討している。 ジャンプ台における踏み切り動作の分析結果について,全日本選手権大会に参加した選手を対象とした動作分析および床反力計測の結果から,女子選手は男子選手に対して発揮した反力が小さく(体重割の値),上昇速度も同様に小さいことが明らかとなった。これは風洞実験で得られた結果を裏付けるものであった。一方で発揮した反力波形には風洞実験による結果と異なる点も観察されたことから,より詳細な解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたスキージャンプ選手を対象とした風洞実験を計画通り実施することができた。分析結果から踏み切り動作における揚力の利用について,選手間で異なる傾向があることが明らかとなり,今後の分析方針の示唆を得ることができた。実際のジャンプ台における床反力の計測結果から,風洞実験における結果の検証に進んでいる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き風洞実験施設を用いた踏み切り動作の空力計測および映像解析を行うことでデータの蓄積を行う。これまでの結果から,有風環境下における踏み切り動作で揚力の利用に差が見られることが明らかとなったが,その原因となる動作・姿勢を抽出し,より明確な因果関係を確立できるよう研究を進める。さらに姿勢変数を従属変数とする空気力回帰モデルを構築し,姿勢変化から空気力を推定する手法の確立を目指す。ここで得られた空気力回帰モデルを,ジャンプ台における動作解析結果に当てはめることで,実際のジャンプ台で選手に作用している空気力の大きさが推定できるようになることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ保存用ハードディスク等消耗品の補充を控えたため。
令和三年度の国内学会への参加及び実地調査研究の旅費として次年度使用額を充てる。
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