研究課題/領域番号 |
19K11668
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
上地 広昭 山口大学, 教育学部, 准教授 (60367084)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 健康行動 / 行動変容 / 強みの活用 / ICT / eHealth / ポジティブ心理学 |
研究実績の概要 |
本年度は,大学新入生を対象に,外出自粛期間中のメンタルヘルス改善を目的としたスマートフォン用アプリケーションを利用したeHealth介入を実践し,その効果について予備的な検証を行った。対象者は,中国地方の国立Y大学に在籍する1年生8名(男性5名,女性3名,年齢±標準偏差=18.13±0.35)を対象者とした。介入期間は,2020年5月15日から5月24日までの10日間であった。対象者の居住地域においては,介入開始の前日5月14日に緊急事態宣言が解除されていたが,大学からの不要不急の外出自粛の要請は続いており,大学への登校も認められていない状態であった。本介入の内容は,ゲーミフィケーションの原理に基づく,健康増進のためのスマートフォン用アプリケーション「健康道」を利用して,毎日の身体活動,食行動,および強みの活用の自己管理を行うことであった。具体的には,アプリケーション上に,身体活動,食行動,および強み(長所)の活用に関する複数の課題(階段を使う,野菜を食べる,友だちを助けるなど)が提示され,達成できた課題について毎日チェックを付けた。課題を一つ達成するごとに1ポイントが付与された。アプリケーション上で,獲得したポイントに基づいて,グラフ(達成した課題の数だけ瓦が積み上がる),ランキング表(毎日,上位3名が表彰される),およびバッジ(40ポイントごとに,トップ画面上のアイコンの帯が白帯→茶帯→黒帯→赤帯と変わる)が表示された。本研究の結果,アプリケーションの利用前後で,GHQ-12の得点は有意に減少していた。効果量も大きく(d = 1.13),アプリケーションを利用することによって,精神的健康度が改善する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,2020年度は,50名程度の大学生を対象に,身体活動,食行動,および強みの活用の増進を狙ったスマートフォンアプリケーション「健康道」を利用した介入を行い,その効果について検証を行う予定であった。しかし,2020年4月以降,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,大学生の構内への立ち入りが制限され,対象者の確保が困難な状況になった。そのような中,大幅に対象者数を減らし,遠隔(オンライン)でのオリエンテーションなどを行いながら,予備的な介入研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,新型コロナウイルス感染症の拡大状況を見ながら,対象者である大学生を一定数(50名程度)確保し,改めて,RCTに則り,スマートフォンアプリケーション「健康道」の効果検証を行う予定である。今年度の予備的な介入研究で,アプリケーションの利用率を高めるためには,対象者の自律性と有能感の欲求を満たし,アイコンやポイント化などのより多くの対象者を没頭させる機能の充実が重要であることが明らかになった。今年度は,その点も意識して,より効果的な介入を行うように努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年4月以降,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,大学生の構内への立ち入りが制限され,当初予定していた対象者の確保が困難な状況になった.そのため,2020年度は,大幅に対象者数を減らしての予備的な介入研究となり,対象者への謝金の支出が不要となった.また,学会がオンライン開催となったため,学会参加のための交通費および滞在費(旅費)の支出も大幅に抑えられた.2021年度には,当初の予定通り,60名程度の対象者を確保し本格的な介入研究を行うため,その際の人件費・謝金に2020年度に未使用となった経費を充てる予定である.
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