研究課題
メタボリックシンドロームとその結果、生じる動脈硬化性病変の間に炎症が介在する。この過程においてはマクロファージや単球をはじめとしたmyeloid系の造血細胞の浸潤・増殖が重要な役割を占めるがその詳細なメカニズムや過剰な栄養素自体が炎症細胞の造血に与えるストレスは未だ明らかでないため、その機構の解明が炎症阻止に基づいた治療法の開発に重要である。Suppressor of cytokine signaling(SOCS)ファミリーはサイトカインシグナルを負に制御する調節因子として発見され、炎症反応を抑制している。また、全身的なhomozygous SOCS3ノックアウト(KO)マウスを新規に樹立し解析したところ、定常状態では炎症は来さないが、高脂肪食負荷により体重増加や脂肪肝の形成なしに肝への好中球・単球・マクロファージの浸潤にはじまる全身炎症に進展することを見出した。この機序として、栄養素自体やその代謝産物が血液細胞に直接的な影響を与えていることを考えたが、マクロファージ、単球、顆粒球などのmyeloid特異的なSOCS3KOマウス(LysM-Cre SOCS3fl/fl)やmyeloid progenitor cellを含む汎白血球特異的なSOCS3KOマウス(Vav-Cre SOCS3fl/fl)では高脂肪食負荷をおこなっても全身的なSOCS3KOマウスと同様の全身炎症は再現できなかった。以上からSOCS3KOマウスにおいて高脂肪食誘発性の全身炎症が起こる機序は白血球におけるSOCS3KOではなく、腸管循環に関連した臓器におけるSOCS3KOが重要であることが予想される。
2: おおむね順調に進展している
LysM-Cre SOCS3fl/flやVav-Cre SOCS3fl/flの樹立には時間を要すが、本年度は樹立を完了すると共に、これらのマウスの解析を終えることが出来たため。
肝臓および腸管におけるSOCS3 KOに起因して、腸管吸収や代謝障害に起因する何らかのdanger signalが発生している可能性がある。このため、肝臓を原因とする炎症が考えられる場合、高脂肪食負荷マウスの脂肪酸代謝に関連する遺伝子発現、代謝産物の変化等を検討する。また、腸管自体の炎症および腸内細菌叢の変化について解析を行う。
2019年度 日本血液学会研究助成金を得ることが出来たため、次年度に研究費を持ち越すことが出来た。次年度中に論文投稿が開始できると思われるため、その投稿費用に繰り越した経費を使用する。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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