研究課題
SOCS3ノックアウトマウスへ高脂肪食負荷を行うと、脂肪肝の形成なしに肝臓への好中球、単球、マクロファージの浸潤による局所炎症を契機として、顆粒球増多による全身炎症を誘発することを見出している。これまで顆粒球増多の原因について検討を行っているが、まず肝臓の脂肪酸代謝について検討したが飽和脂肪酸 /不飽和脂肪酸バランスはわずかに変化しているものの致死的炎症を来すほどのものではなかった。そこで腸内細菌叢に着目したところ16S rRNAシーケンスで腸内細菌叢の変化を認め、4種抗生剤投与(ABPC+FRM+VCM+MNZ)により顆粒球増多はキャンセルされた。この造血機構を解明するために、骨髄における造血幹細胞やmyeloid progenitor cellについて解析を行った。結果、炎症発症初期ではLSKにおいては高脂肪食ではSOCS3ノックアウトマウスにおいて高脂肪食負荷を行うとLSK、CD34-LSK、CMPおよびGMPの増加を認めたが、これらの所見は腸管滅菌により消失した。さらに腸管壁に存在している免疫細胞の関与を検討した。SOCS3はTh17細胞の分化、増殖に関わることが知られることから、Th17細胞を十二指腸において検討した。結果、炎症発症初期にIL-17A, IL-21, IL-22, CCR6の発現をqPCR法にて検討したが、SOCS3ノックアウト群および高脂肪食負荷SOCS3ノックアウト群ではコントロール群と有意差を認めなかった。結腸においても同様に検討したが、Th17関連遺伝子は増幅できず、存在しても極めて微少な細胞群であると推測された。これらの結果から炎症の原因はSOCS3ノックアウトおよび高脂肪食負荷による腸内細菌叢の異常が顆粒球増多に最も影響したと考えられた。
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