研究実績の概要 |
本研究において、我々は経管栄養管理中の重症心身障害児40例(うち脳性麻痺患児は20例)を対象とし、早朝空腹時採血にて血中グレリン濃度(fmol/mL)を測定し、身体計測や血液検査から得られた各栄養指標、安静時エネルギー消費量(REE)との相関をSpearman相関検定で検討した。また血中グレリン濃度からのREEの予測に関しては線形単回帰分析を用いて解析を行った。 本研究の結果、脳性麻痺患児では血中アシルグレリン、総グレリン濃度ともに体重(r = -0.717, -0.579)、体格指数(r = -0.627, -0.589)、上腕周囲長(r = -0.757, -0.564)、上腕皮下脂肪面積(r = -0.621, -0.510)と有意に負の相関を認め、体重当たりのREE(REE/BW (kcal/kg))(r = 0.894, 0.852)と有意に正の相関を認めた。また血液・生化学検査の栄養指標(白血球数、リンパ球数、総蛋白/アルブミン、コリンエステラーゼ、総コレステロール、中性脂肪、トランスサイレチン、レチノール結合蛋白、トランスフェリン、AST/ALT、クレアチニン、血糖値)との有意な相関は認めなかった。血中総グレリン濃度からのREE予測式は、REE/BW (kcal/kg) = 0.175 × 総グレリン濃度 (fmol/ml) + 15.46 (r2 = 0.625, p < 0.0001)となった。一方、筋疾患患児では血中デスアシルグレリン、総グレリン濃度ともに上腕三頭筋皮下脂肪厚(r = -0.857, -0.952)、上腕皮下脂肪面積(AFA)(r = -0.833, -0.786)、Z score-AFA(r = -0.738, -0.786)が有意な負の相関を認めたが、体重当たりのREEとの相関は認めなかった。 以上より、脳性麻痺患児の血中総グレリン濃度はエネルギー蓄積量と負の相関を示し、これを測定することで基礎代謝量を予想し、適正な栄養投与量の決定に有用である可能性が示唆された。
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