研究課題/領域番号 |
19K11790
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
菊崎 泰枝 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60291598)
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研究分担者 |
小倉 裕範 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60304557)
新田 陽子 お茶の水女子大学, 基幹研究院自然科学系, 准教授 (70403318)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒスタミン産生抑制 / ヒスチジン脱炭酸酵素 / モルガン菌 / 抗菌活性 / クローブ / タンニン |
研究実績の概要 |
毎年のように給食施設等で発生しているヒスタミンに起因するアレルギー様食中毒は、ヒスタミンが熱に安定であることから加熱調理によって防ぐことができない。ヒスタミン蓄積は、食品付着菌由来のヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の作用により食品中のヒスチジンがヒスタミンに変換されることによって起こり、その防止策としてはHDCの阻害およびヒスタミン生成菌の増殖抑制が挙げられる。本研究は長年食習慣のある安全な食用植物からヒスタミン生成抑制作用を持つ植物を見出し、分子レベルで有効成分を明らかにすることを目的としている。昨年度までに、フトモモ科香辛料のクローブを塩化メチレン、70%含水アセトンで順次抽出し、後者を酢酸エチル可溶部と水溶部に分画し、強いヒスタミン生成菌増殖抑制効果を示した酢酸エチル可溶部をさらに分画して、エラジタンニンおよびガロタンニンを含む画分に強い抗菌活性を認めた。本年度、抗菌活性画分をさらに各種カラムクロマトグラフィで精製し、2種のタンニンを単離・構造決定した。これまでにHDC阻害活性成分として単離した9種のタンニンを合わせてモルガン菌に対する抗菌活性を測定したところ、最小阻止濃度は10~20マイクロモルであることが明らかとなった。HDC阻害活性では、分子内のガロイル基の個数や結合位置が活性の強さに影響を与えたが、抗菌活性の強さには大きな影響がないことが示唆された。今年度の研究結果より、クローブに含まれるタンニンは、HDCの阻害活性とヒスタミン生成菌の増殖抑制活性を合わせ持ち、クローブのヒスタミン産生抑制作用に寄与していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、サバ筋肉中のヒスタミン産生抑制効果を認めたクローブを対象に活性成分の解明を行った。その結果、エラジタンニンおよびガロイルタンニンがHDC阻害活性およびヒスタミン生成菌に対する抗菌性の両方を示すことが明らかとなった。ただ、活性画分すべてを精査できたわけではなく、ひきつづき活性成分の解明が必要である。また、今年度は、クローブとともに研究対象としてきたバラ科のメドウスウィートについては活性成分の解明に至らず、現在、抗菌活性成分の精製・単離を進めているところである。また、本研究のもう一つの課題である「少量の試験試料で魚肉中ヒスタミン蓄積抑制効果を測定できる試験法の確立」についても測定条件の目途は立ったものの詳細な条件検討中であり、全体の進捗としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
クローブ、メドウスウィートの抗菌活性画分からひきつづき成分の単離・構造解析を進める。得られた単離化合物について、抗菌活性およびHDC阻害活性を調べ、化学構造と活性の関連性を明らかにする。また、本研究では、サバ筋肉を利用する試験では試験試料が多く必要となり、単離化合物の試験には不向きであることから、少量の試料でヒスタミン蓄積抑制効果を調べるモデル実験法を構築することも課題として挙げている。今年度、予備的に検討を行い測定条件の目途が立ったので、今後、モデル実験法を確立し、本研究で得られた単離化合物を用いて最終的に確立した方法を用いて、ヒスタミン産生抑制活性を調べることも目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
少量の試料でヒスタミン蓄積抑制効果を調べるモデル実験法を構築し、その妥当性を検証するために従来のサバ筋肉中ヒスタミン蓄積抑制試験を合わせて実施する。この試験法では比較的高価なキットを使用する。本年度その検証を十分に行えなかったことから、次年度に実施するためにその分の次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、ヒスタミン測定用キット、HDC阻害活性および抗菌活性測定、成分の精製・単離および構造解析、HPLCによる定量に必要な試薬および器具類等、また、論文投稿に係る費用に使用する予定である。
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