研究課題/領域番号 |
19K11814
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 健洋 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (40431548)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グラフアルゴリズム / 組合せ遷移 |
研究実績の概要 |
本年度は特に,グラフの条件付き全域木の遷移問題に関する研究を進めることが出来た.全域木に条件が付かない場合には,マトロイドの基交換公理により,任意の2つの全域木が互いに遷移可能であることがいえる.すなわち,全ての全域木からなる解空間グラフを考えれば,それは連結である.さらに,マトロイドの基交換公理により得られる遷移系列を観察すると,それは対称差のみを遷移させており,最短の遷移系列であることもわかる.このように,全域木に条件が付かない場合には,その到達判定だけでなく最短遷移問題も多項式時間で解ける. 本研究では,全域木に条件が付く場合を考えた.これはすなわち,前述の解空間グラフの部分グラフを考えることに相当する.したがって,条件付き全域木からなる解空間グラフは連結かどうかもわからず,到達判定も自明ではない.本研究では,全域木に付加する条件として,全域木の最大次数の上限または下限を設定した.最大次数の上限を2に設定した場合,その全域木はハミルトンパスとなり,この条件はハミルトンパスの遷移問題を一般化させている.本研究では,最大次数の上限を条件とした場合には,到達判定でさえPSPACE完全であることを示した.一方で,最大次数の下限を条件とした場合には,到達判定が多項式時間で解けることを示した.また,全域木の直径の上限または下限を条件にした場合も解析を行った. この他にも,辺連結度に着目したグラフの向き付けの遷移など,グラフ上の様々な遷移問題を解析し,アルゴリズムの研究開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに,グラフに関する最短遷移問題に対して,迂回遷移の特性を捉えたアルゴリズムの開発に成功しており,またそこで得られた知見を活用して,様々な組合せ遷移問題の計算容易性と困難性の解析に成功している.しかしながら,コロナ禍の影響により,国内外の研究者らとの共同研究は依然進めづらいままであり,本研究で開発したアルゴリズム手法を整理し,本研究をまとめ上げるためには,時間が必要である.そのため,補助事業期間の延長を申請し,認めて頂いた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発したアルゴリズム手法を整理し,まとめる.このためにも,国内外の研究者らとの共同研究を通して,より広い視点でアルゴリズム手法を整理していく.対面での打合せを実施した方が,この目的には適しているが,コロナ禍の状況を見ながら,オンラインでの打合せも継続していく.また,本研究で開発したアルゴリズム手法や組合せ遷移の知見を活用して,様々な具体的な遷移問題の解析にも継続して取り組んでいく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究をまとめあげるためにも,国内外の研究者らと対面で研究打合せをしたり,国内外の会議や研究集会において研究成果の発表や情報収集を行ったりする予定であった.しかし,昨年度に引き続き,コロナ禍の影響が強く残り,国内でさえ出張を控える状況が続いていたため次年度使用額が生じた.この次年度使用額は,コロナ禍の状況に注意しながら,共同研究や成果発表のために出張を行ったり,それに付随して必要となる物品を整えたりするために活用していく.
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