本研究は、大気中水銀の沈着に関する反応プロセスの理解を目標とし、ハワイ島にある米国の気象観測所、マウナ・ロア観測所(MLO)で採取した大気中ガス状原子状水銀(GEM)について水銀同位体分析を実施することとした。MLOにおけるGEMのδ202Hgは、他の山岳地帯から得られた同位体比よりも低い値となった。マウナロアの独特な大気条件(日中は上り坂の風、夜間は下り坂の風)は、地上および対流圏由来のGEMの混合を生じ、同位体組成に影響を与えたと考えられる。また、偶数および奇数の非質量依存型同位体分別の痕跡より、GEMからガス状酸化態水銀(GOM)の酸化、およびGOMから粒子状物質への分配が示唆された。
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