研究課題/領域番号 |
19K12477
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀井 伸浩 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10450503)
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研究分担者 |
森 晶寿 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30293814)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国 / エネルギー / 環境 / 市場経済化 / 価格 / 排出権取引 |
研究実績の概要 |
2020年度の計画は、堀井が中国での現地調査を大々的に展開し、エネルギー産業の市場経済化の実態について得た情報に基づき先行して論文草稿を執筆、森の排出権取引市場に関わる研究にインプットを提供する予定であった。しかしながら昨年度末より新型コロナの流行により中国が入国制限を課したため、結局2020年度を通じて中国の現地調査を実施する機会はついぞ訪れなかった。 厳しい状況の中で、堀井の研究活動は昨年度の文献調査のアップデートとインターネットを通じた情報収集という形にならざるを得なかった。しかしエネルギー産業の市場経済化が消費の現場に及ぼした具体的な影響について、インターネットで得られた情報は分析に必要な量と深度からみて十分でなく、遺憾ながら当初計画が想定した論文草稿の執筆には至らなかった。 他方、森が行う7省市の排出権取引のパイロットプロジェクトに関する分析は報告書やインターネットサイトでデータが得られるため、ほぼ計画通り研究活動を進めることができた。入手したデータを用いて排出権取引価格と各省市の排出削減の関係について初歩的な計量分析を行うことができた。 研究成果の公表状況は以下の通り。堀井は、英文書籍原稿として1本を執筆し、国内学術誌に1本の論文を公表した。また学会や研究集会、シンポジウムで本研究の成果の一部を4回報告した(うち招待講演2回、うち国際会議1回)。森は、英文書籍原稿として4本を執筆するとともに、Q1国際学術誌に2本の査読付論文を公表した。また国内外での招待講演において本研究の成果の一部を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時点の計画では、初年度である2019年度は文献調査を中心に理論的な考察を深め、2020年度は中国のエネルギー市場経済化の進捗に関する最新動向と排出権取引制度の実際の運用状況について大々的に現地調査を実施し、実証分析を行うために必要な情報収集を行う予定であった。しかしながら新型コロナウィルスの世界的流行によって中国は入国制限措置を導入したため、一度も現地調査の実施に至らなかった。 本研究課題の意義のひとつが、文献やインターネット情報では得ることができない情報・データを用いて実証分析を行うことであり、中国での現地調査はそのための非常に重要な手段である。現地調査が実施不可能な状況であったため、代替手段も模索したが、結論としてはやはり十分な結果を得ることができなかった。この制約は堀井の研究の進捗に大きく影響し、国内の関連研究者からの情報収集、オンラインでの中国調査のノウハウなどについて意見交換を重ねるなどしたが、結局妙案は見つからなかった。したがって2020年度の研究経費の使用額は予定を大幅に下回るものとなった。 他方、森については元々現地調査ではなく、報告書やインターネットサイトで得るデータに基づく研究を計画していたため、2020年度もおおむね計画通り研究活動を進めることができた。入手したデータを用いて排出権取引価格と各省市の排出削減の関係について初歩的な計量分析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、とりわけ堀井の研究計画においては中国における現地調査は欠くべからざるものであり、研究計画で想定した成果を達成するには中国現地調査を割愛し、他の情報・データ手段で代替することは極めて困難である。したがって何としても中国現地調査を当初の計画通り実施すること、これが今後の研究の推進に向けた最重要課題である。そのための研究経費も使用せずに繰り越している。しかしながらその実現はひとえに中国政府の国境管理次第であり、もどかしい限りである。仮に2021年度も中国が入国制限を継続した場合は(入国後の隔離措置の継続も含む)、甚だ遺憾ではあるが、本研究課題の期間延長も検討することとしたい。 他方、森の研究活動は計画通りに進んでいるため、堀井は2020年度の文献・インターネット情報の収集・分析を継続しながら、その成果を森にインプットとして提供し、森の研究推進の支援に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況の欄に記載した通り、計画通りに研究経費支出が進んでいない理由はひとえに中国現地調査が中国政府による国境管理措置によって実施できていないためである。2021年度に中国に入国し、現地調査が実施可能な状態になれば、速やかに大々的な現地調査を実施する所存である。計画に従い、ケーススタディを行う2省市でフィールドワークを行うこととしたい。 但し、2ヵ年分の現地調査計画を2021年度の1年間で実施することに時間的な厳しさがあるのも否めない。中国政府の入国制限が解かれるのはいつなのか、年度後半であれば想定通りのフィールドワークを完結させるのはかなり難しいことになるし、そもそも2021年度を通じて国境管理措置の緩和は望めないという見方もある。その場合は、本研究課題の終了期間延長も考慮に入れざるを得ない。
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