研究課題
基盤研究(C)
本研究は兵庫県明石市を対象として、住民がその地域をどのように認識しているかを考察したものである。研究にあたってはフィールドワークや聞き取り調査に加え、文献学的な手法も併用し、住民意識の形成過程や通史的変遷に焦点を当てた。はじめに明石に関する資料収集とアーカイブの構築を行い、次いで「農村」「海との関わり」「現代における祭事」」という観点から個別研究を行った。その結果、現代の「明石の自画像」は概ね江戸期に形成された地域的特色を基盤とするが、戦前期における郊外型都市としての発展、高度経済成長期における産業・生活の変化によって、こうした特色が徐々に変容を迫られてゆく過程が明らかになった。
人文地理学
「地域の自画像」は必ずしも固定したものではない。従来の研究では同時代史的な「自画像」が注目されがちであったが、本研究ではむしろ、その歴史的推移に着目した。与えられた自然・社会条件のもとで、人々は意識的・無意識的な選択を重ねつつ、自己イメージを形成し、共有する。そのさまを明石という地域に即しつつ、具体的・通史的に検討することで、「物語としての歴史は、人間集団のなかでいかに形成され、何をきっかけに変化してゆくのか」という実像を明らかにすることができた。