研究課題/領域番号 |
19K12604
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
申 キヨン お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 教授 (00514291)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クオータ / 韓国 / ジェンダー / 女性議員 / 政治代表性 / 政治資金 |
研究実績の概要 |
本研究は、議会のジェンダー公平な代表性を確保するために導入されたジェンダー・クオータ(女性候補者割当制)の効果とその制度が女性の政治的代表性に及ぼす影響を韓国の事例により分析するものである。クオータ制度が導入されて20年を超える韓国で、国会の女性議員は未だに2割に至っておらず、若い世代を代表する議員も少ない。本研究は議会の多様性とジェンダー平等を進めるための制度というクオータ制度の本来の目的がどれだけ韓国の議会に受け入れられ、制度として定着してきたのかを明らかにすることを目的とする。 そのためにこれまで20年間女性候補者クオータ制度とその関連制度(政党の候補者選定方法や政治資金制度など)がどのように変化してきて、政党によってどのように運用されてきたのか、現状を把握する。また政策の当事者である議員たちがクオータ制度や女性の政治代表性についてどのような考えをしているのかを調査し、とりわけ女性議員のキャリアパターンや議会活動を分析することで、クオータの制度化を妨げる要因や抵抗、政治代表性に及ぼす影響を明らかにする。 本研究は2021年までの3年計画だったが、2年目の2020年にはコロナ禍によってフィールドワークが実施できずやや遅れていたため2022年度まで1年延期した。2021年度には状況が改善され海外渡航が可能になり韓国の国会議員にインタビュー調査を実施することができたため、研究計画をキャッチアップして順調に研究を進めることができた。その成果を英語論文3本でまとめて、2本は英文雑誌(Politics&Gender, International Political Science Review)に、1本は国際共同研究の成果として2022年出版(Routledge)の書籍に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の2019年にはクオータ制度の運用実態を把握することを目的として法制度に注目して研究を行い、その結果を論文(韓国語論文)にまとめて発表した。韓国でジェンダー平等を達成するためのクオータ関連法制度は徐々に忠実化してきたものの、ほとんどの政党は政策の目的を達成するために努めるより、拘束力のないクオータを守らない姿勢を取ってきたことが明らかになった。2年目の2020年度には、ジェンダー・クオータ制度の効果を、とりわけ女性議員の政治キャリア及び議会活動を中心に分析することを目指した。しかしコロナ禍による海外出張が叶わず研究がやや遅れていた。代わりにオンラインで入手可能なデータの収集、1年目に収集したデータの分析を中心とした研究に取り組んだ。3年目の2021年度もコロナ禍は続いたが、韓国の国会議員にインタビューが実施できた。また関連研究テーマでドイツのアデナウナ財団シンガポールオフィスの国際共同研究に参加することができ、国際的な交流も進めながら研究を遂行することができた。インタビュー調査から、クオータ制度は現在まで女性や少数政党において重要な政治参画のルートを提供していることが分かった。しかし男性議員の中では未だにクオータ制度自体に対する抵抗が強く、議会の政策決定過程では女性やマイノリティの声が政策に反映されにくい構造があることが明らかになった。 そられの研究結果は、英語論文にまとめてPolitics&Gender, International Political Science Reviewに掲載が決定された。またアジアの10カ国研究者と共同に取り組んだ国際共同研究は2022年8月にRoutledge社から出版される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年の法制度の内容や運用分析に加えて、2021年にフィールドワークや議員へのインタビュー調査ができたことでクオータ制度によって議員になった女性議員の議会活動の実態について調べることができた。今年は最終年度になるため、これまでの研究を総括しながら、女性議員の政治キャリアを分析して政治キャリアのパターンを分類し、政治キャリア別にどのような議会活動を行なっているのかをさらに分析を深める。そして女性候補者や議員の数だけでなく、議会の意思決定や法案の変化など、クオータ導入による長期的な影響明らかにする。可能であれば追加フィールドワークを実施して2022年の地方選挙後の変化についても調べる。 また、海外の専門家とオンラインウェビナーを開き、研究成果を発表する機会を設けることを検討する。引き続き執筆にも力を注ぎ、研究報告書及び英語・日本語論文にまとめて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年にコロナ禍によって海外研究集会や学会に出席することができなかったため、繰越になった。 最終年度には追加のフィールドワーク、研究集会、シンポジウム開催のための費用として使用予定である。
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