研究課題/領域番号 |
19K12731
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
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研究分担者 |
瀧本 彩加 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (40726832)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 別れ / 出会い / ニホンザル / ウマ / クロサイ / 動物園 |
研究実績の概要 |
社会の中で暮らす動物が親しかった動物と別れた時、あるいは未知な同種個体が加わった時、互いにどのような行動をするのかを、行動観察によって明らかにすることを、本研究は目指している。 野生ニホンザルを対象とした研究では、過去16年間にわたって蓄積している毛づくろいデータを分析し、赤ん坊という未知な個体が生まれた時の母ザルと周囲の個体の関係、さらに、親しかった個体が死亡等によって集団からいなくなった時に別の個体と親密な関係を構築するのかを中心に分析を進めている。本年度は、分析途中であるため、まだ、明瞭な結果は出ていない。その中で、オトナオスの中には、生後半年から12カ月齢の特定の子ザルと抱く、運搬するなどの親しい行動を行い、その後、そのオスと子ザルの母ザルとの親しい関係が展開する事例を確認できた。 牧場で1日24時間、365日の放牧をされている北海道和種馬において、生後5,6カ月齢に達した仔ウマが母ウマのいる集団から分離される(これを離乳作業と称する)。離乳作業によって仔ウマからの分離を経験した母ウマの行動を評価するために、離乳作業前後の母ウマの行動を観察した。離乳作業直後から2日間ほど、通常場面ではほとんど発しないイナナキを母ウマが比較的頻繁にすること、通常よりも軟便であることが多い事実が明らかとなった。また、このような期間に、母ウマが乳分泌することも確認された。これらの事実から、離乳作業直後には、母ウマが心理的ストレスを負っている可能性が指摘できる。ただし、本観察では、観察頭数が4頭であり、次年度以降に観察頭数を追加する必要がある。 動物園で暮らすクロサイの子どもの生後4年半の行動発達のデータを解析途中である。子が生後2歳半の時、母が次の子を出産したが、その際、出産前日から、急に子に対して攻撃的になり、子を追い出す行動を示した。「別れ」を母が主導していると示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニホンザルでは、過去16年間に収集した膨大なデータの解析が順調に進んでおり、並行して、行動観察も行っている。北海道和種馬の離乳作業前後の母ウマの行動観察も予定通り実施でき、これまで研究対象にされることがなかった「母子の別れ」の際の「母」の行動に焦点を当てることができている。さらに、すでに行動観察を終了している生後4年半に及ぶクロサイの行動発達のデータ解析も順調に進んでいる。以上より、「おおむね順調に進んでいる」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度同様に、以下の4点を進める。(1)ニホンザルの行動観察を実施しながら、これまでのデータを解析する、(2)北海道の牧場で暮らす北海道和種馬の離乳作業前後の母馬の行動について、行動観察のデータを2020年度も収集する、(3)クロサイの子の4年半の行動発達のデータの解析を終え、投稿の準備を開始する、(4)動物園で暮らす動物たちが他の動物園に移る機会をとらえて、移動前後の行動観察を適宜実施する
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2,3月にコロナ渦のために、出張しての研究ができなかったために、6万円弱の残額が発生した。しかし、この額は2020年度の旅費として用いる予定である。
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