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2022 年度 実施状況報告書

親と環境が早産児の高次脳機能発達を促す機序の近赤外分光法と行動指標による研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K12734
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

有光 威志  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (60383840)

研究分担者 石井 健太郎  専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (10588742) [辞退]
開 一夫  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30323455) [辞退]
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード認知脳科学 / 近赤外分光法 / 小児科学 / 新生児医学 / 発達
研究実績の概要

今年度は、これまでの研究成果を発展させ、近赤外分光法を用いた新生児の脳機能研究に加えて、新生児集中治療室で用いられる医療機器が早産児の発達に与える影響に関して基礎的検討を行うとともに、家族の関わり合いや社会支援の現状について検討した。新生児の脳機能研究については、これまでに得られたデータの解析を進めた。また、新生児集中治療室で用いられる医療機器として保育器に関する基礎的検討を行った。早産児の低体温は、合併症や死亡のリスクを高め、発達に影響を与える可能性がある。そのため、保育器の保温機能は重要である。本研究では、搬送用保育器の手入れ窓にカバーを装着することの有効性について調べた。その結果、手入れ窓にカバーを装着すると、手入れ窓を閉鎖した時と同等の保温効果があることが示された。この研究結果から、医療機器の改善により早産児の神経学的予後を改善出来る可能性が示された。新生児と家族の関わり合いや社会支援の現状に関する調査については、日本NICU家族会機構(JOIN)に参加している全国17の都道府県の家族会から回答を得た。その結果、「日常生活又は社会生活に支障がある」状態になったことがある家族は半分以上で、こどもが10代になっても同様の状態であったという回答があった。約3割の家族は「日常生活又は社会生活に支障がある」状態に対して、こどもが8歳~10歳の期間に神経発達症などに対して必要な医療費助成が無く、その期間に医療費助成があれば日常生活又は社会生活に役だったと回答された。本調査結果により、適切な医療費助成により家族支援が可能であり、早産児の発達を促すための社会支援には改善の余地がある可能性が示唆された。本研究が発展することで、親と環境が早産児の高次脳機能発達を促す機序を明らかにできる可能性がある。本研究の成果は、新生児の後障害率減少につながる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新生児集中治療室で用いられる医療機器に関する解析が進み論文発表した。また、今年解析を進めた近赤外分光法を用いた新生児の脳機能研究について来年度成果発表予定である。さらに、早産児と親の関わり合いや早産児の成長発達に影響を与える要因に関する調査も進んでいる。研究はおおむね順調に進んでおり、来年度さらに研究を発展させることが出来ると期待される。

今後の研究の推進方策

本研究は順調に進展しており、現在の研究を継続していくことが成果の発展へと結びつく。今後の研究計画としては、大きく3つの目標がある。1) 2022年度までに得られた早産児の高次脳機能発達を促す環境要因の調査解析を進めて成果発表すること。具体的には、全国の早産児の親を対象に、新生児集中治療室入院中および退院後における親の関わり合いや医療ケアおよび社会支援の現状に関する調査結果を成果発表する。2) 2022年度までにデータが得られた近赤外分光法を用いた新生児の脳反応に関する知見を発展させ、1)で得られた親や環境要因が早産児の脳反応や行動指標とどのような関わり合いがあるか評価し成果発表する。3) 上記から得られた知見をさらに分子・細胞生物学的知見へと発展させるため、in vivoの系での確立と応用を試みる。出生直後の脳組織がヒトの早産児に相当するマウス・ラットを早産児モデルとして、親や環境が早産児の高次脳機能障害に与える影響の機序を探る。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
今年度の研究を確実に遂行するためには、当初は交付額の人件費の支出が必要だと考えられた。しかし、現在の環境を最大限に生かすことで、研究遂行がおおむね順調に進んだため、不必要な人件費の支出は削減した。また、予定していた学会へ都合により参加できなかった。そして、効率的な物品調達を行った。そのため、次年度使用額が発生した。
(使用計画)
来年度は、研究をさらに進展させるため、人件費の支出が必要となってくる。また物品費などが当初の計画より増加する。次年度使用額は、近赤外分光法実験関連消耗品、ソフトウェア、試薬等を購入するために用いる。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Use of access port covers in transport incubators to improve thermoregulation during neonatal transport.2023

    • 著者名/発表者名
      Fukuyama T, Arimitsu T.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 13 ページ: 3132

    • DOI

      10.1038/s41598-023-30142-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Risk factors of neonatal hypoglycemia in neonates born to mothers with gestational diabetes.2023

    • 著者名/発表者名
      Arimitsu T, Kasuga Y, Ikenoue S, Saisho Y, Hida M, Yoshino J, Itoh H, Tanaka M, Ochiai D.
    • 雑誌名

      Endocr J.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1507/endocrj.EJ22-0521

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Seasonal variation in vitamin D status of Japanese infants starts to emerge at 2 months of age: a retrospective cohort study.2023

    • 著者名/発表者名
      Takahashi K, Arimitsu T, Hara-Isono K, Ikeda K.
    • 雑誌名

      Br J Nutr.

      巻: 129 ページ: 1908-1915

    • DOI

      10.1017/S0007114522002744

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 2025年の更新に向けた痛みのケアガイドライン 新たなクリニカルクエスチョン 疾患による痛み・人工呼吸器装着中の痛みに関するクリニカルクエスチョン2023

    • 著者名/発表者名
      山田恭聖, 福原里恵, 原田香奈, 田中広輔, 春藤望, 窪田昭男, 有光威志, 米澤かおり, 小澤未緒
    • 雑誌名

      日本新生児成育医学会雑誌

      巻: 35 ページ: 48-50

  • [雑誌論文] 2025年の更新に向けた痛みのケアガイドライン 新たなクリニカルクエスチョン 術後痛ケアガイドライン作成のためのクリニカルクエスチョン2023

    • 著者名/発表者名
      窪田昭男, 小澤未緒, 山田恭聖, 福原里恵, 有光威志
    • 雑誌名

      日本新生児成育医学会雑誌

      巻: 35 ページ: 43-47

  • [雑誌論文] 2025年の更新に向けた痛みのケアガイドライン 新たなクリニカルクエスチョン 新生児の痛みのケアへの家族参加に関するクリニカルクエスチョン2023

    • 著者名/発表者名
      有光威志, 原田香奈, 田中広輔, 春藤望, 側島久典, 米澤かおり, 窪田昭男, 山田恭聖, 福原里恵, 小澤未緒
    • 雑誌名

      日本新生児成育医学会雑誌

      巻: 35 ページ: 39-42

  • [雑誌論文] 2025年の更新に向けた痛みのケアガイドライン 新たなクリニカルクエスチョン「NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン」2025年改訂版に向けたクリニカルクエスチョンの概要2023

    • 著者名/発表者名
      小澤未緒, 山田恭聖, 福原里恵, 窪田昭男, 有光威志, 米澤かおり, 田中広輔, 原田香奈, 側島久典, 春藤望, ゴーウィンかおり, 梅原志保, 渡辺綾子
    • 雑誌名

      日本新生児成育医学会雑誌

      巻: 35 ページ: 36-38

  • [雑誌論文] A case of severe neonatal transient hyperinsulinemic hypoglycaemia without identifiable risk factors: a case report.2022

    • 著者名/発表者名
      Osada A, Arimitsu T, Kusakawa M, Kin T, Hida M.
    • 雑誌名

      BMC Pregnancy Childbirth.

      巻: 22 ページ: 423

    • DOI

      10.1186/s12884-022-04763-3.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン」委員会 ガイドライン普及に関する全国調査2022

    • 著者名/発表者名
      小澤未緒, 清水彩, 米澤かおり, 有光威志, 諌山哲哉, 窪田昭男, 側島久典, 田中広輔, 田村高子, 遠山悟史, 原田香奈, 福原里恵, 山崎紀江, 山田恭聖
    • 雑誌名

      日本新生児看護学会誌

      巻: 28 ページ: 11-15

  • [雑誌論文] 【周産期と最先端サイエンス】新生児領域 新生児の感情のモニタリング2022

    • 著者名/発表者名
      有光威志
    • 雑誌名

      周産期医学

      巻: 52 ページ: 1023-1028

  • [雑誌論文] 【メンタルヘルスの視点からみたCOVID-19感染の影響とその対応】感染症蔓延下における新生児医療関連施設、外来でのメンタルヘルスへの工夫 感染症蔓延下における家族のメンタルヘルスに寄り添うには デベロップメンタルケアからみた早産児出生後の家族支援2022

    • 著者名/発表者名
      太田英伸, 有光威志, 新井浩和, 大城昌平, 仁志田博司
    • 雑誌名

      周産期医学

      巻: 52 ページ: 902-905

  • [学会発表] 周産期医療における臨床研究と家族支援の橋渡し -近赤外分光法を用いた脳機能研究から考える家族のコミュニケーションの重要性-2023

    • 著者名/発表者名
      有光威志
    • 学会等名
      第3回香川県新生児医療症例検討会~香川県新生児研究会冬季特別セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 新生児の痛みのケアへの家族参加に関するクリニカルクエスチョン2022

    • 著者名/発表者名
      有光威志
    • 学会等名
      第66回日本新生児成育医学会・学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] NICUの環境デザインとDC2022

    • 著者名/発表者名
      有光威志
    • 学会等名
      第26回ディベロップメンタルケアベーシックセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 家族が何を求めているか2022

    • 著者名/発表者名
      有光威志
    • 学会等名
      第58回日本周産期・新生児医学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] NRNJ フォローアップ率向上に向けた,日本NICU家族会機構の取り組み2022

    • 著者名/発表者名
      有光威志
    • 学会等名
      第58回日本周産期・新生児医学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 小さく生まれた生命のキセキ2022

    • 著者名/発表者名
      有光威志
    • 学会等名
      第58回日本周産期・新生児医学会学術集会
    • 招待講演
  • [図書] 赤ちゃんの生理のきほん 聴覚、with NEO別冊るるNEO 新生児の生理ビジュアルノート2023

    • 著者名/発表者名
      関芳子, 有光威志 他(杉浦弘、齊藤貴子、寺部宏美 編)
    • 総ページ数
      200
    • 出版者
      メディカ出版
    • ISBN
      978-4-8404-8145-8
  • [備考] 日本NICU家族会機構

    • URL

      https://www.join.or.jp/

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公開日: 2023-12-25  

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