研究課題/領域番号 |
19K12886
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研究機関 | 弓削商船高等専門学校 |
研究代表者 |
葛目 幸一 弓削商船高等専門学校, 情報工学科, 教授 (80225151)
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研究分担者 |
桝田 温子 弓削商船高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (30321508)
益崎 智成 弓削商船高等専門学校, 情報工学科, 助教 (30779905)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚障碍者 / 歩行支援 / 点字ブロック / 地磁気マップ / 機械学習 / インドアナビゲーション |
研究実績の概要 |
視覚障碍者が,単独で,自由に,しかも安全に移動できる社会環境の整備は重要な課題である.現在,視覚障碍者の歩行支援をする点字ブロックは広く敷設されているが,敷設に関する情報は未だ整備されておらず,障碍者にとって歩行経験のない道での単独歩行は,大きなストレスである.また、点字ブロックの誤認識に起因する駅構内での転倒事故も多発している.以上の背景のもと、次の2項目について研究を実施している. 【1】点字ブロックマップと地磁気マップを活用した視覚障碍者歩行支援システムの開発 地磁気を利用したインドアナビゲーション技術では、地磁気マップ作成の際、フロア全体の地磁気の計測が必要で、多大な労力とコストがかかる課題がある.本研究では、視覚障碍者が歩行時に使用する点字ブロックの周辺に限定して地磁気マップを作成する.また、点字ブロック周辺の情報を含む点字ブロックと地磁気マップを活用して、視覚障碍者の歩行を支援するシステムを開発している.本年度は、地磁気の計測に加え、点ブロックの敷設情報(ブロックの種別、長さ、方向など)とブロック周辺のランドマーク情報も同時に取得する計測機を開発し、その動作を確認した. 【2】マルチチャンネル圧力センサを用いた点字ブロックの自動識別 マルチチャネル圧力センサーアレイによって取得された足圧データを使用して、点字ブロックの自動識別システムを開発している.まず、マルチチャンネル圧力センサーアレイを用いた足圧データ取得装置を新たに考案した.次に、点字ブロックを正確に識別するために、さまざまな条件下で取得した足圧データをニューラルネットワークで学習し、識別性能を評価した.実験の結果、入力層(16ニューロン)、隠れ層(5ニューロン)、出力層(4ニューロン)で構成される非常にシンプルな構造を持つニューラルネットワークにより、点字ブロックを98%以上の高精度で識別するができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の進捗は、おおむね計画どおりに進行している。但し、研究成果を発表する場(当該研究分野の研究会や国際会議)が新型コロナウィルスの影響で皆無になることが懸念される.また、研究を遂行するにあたり、学生の協力が不可欠であるが、同様の影響により、学生が学校に登校できない状況で今後の研究に支障が出る可能性がある.今後は、研究打合せ等は、ネットを介してテレ・リサーチにより行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
【1】点字ブロックマップと地磁気マップを活用した視覚障碍者歩行支援システムの開発 ①DTW(Dynamic Time Warping)を利用した位置推定アルゴルズムの開発:作成した地磁気マップと歩行時に計測した地磁気データを照合し、歩行者の自己位置推定を行うアルゴリズムを開発する. ②スマートフォンを利用したナビゲーションアプリの開発:①のアルゴリズムをスマートフォンにアプリとして実装したナビゲーションシステムのプロトタイプを開発する. 【2】マルチチャンネル圧力センサを用いた点字ブロックの自動識別 ①クラウドを利用した機械学習システムの構築:点字ブロックの自動識別を実現するために、学習用データをクラウドに構築されたニューラルネットワーク識別器に送信し、重み係数を計算するシステムを開発する.② FPGAまたは組み込みマイコンを用いた推論プロセッサの開発:①で学習した重み係数をクラウドからダウンロードし、FPGA(またはマイコン)上で識別する推論プロセッサを設計する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウィルスの影響で、予定していた国際会議での研究発表が無くなった.来年度は、「国際会議」での研究発表2回、「国内学会」での研究発表2回を計画している.また、本年度試作した、点字ブロックマップ、地磁気マップ計測装置のハードウェア部を小型化するために「電子回路基板」を開発する。更に、推論プロセッサ開発のためのFPGA開発ツール、マイコン開発ツールを購入する。
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