研究課題/領域番号 |
19K13000
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
巖谷 睦月 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (40749199)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ルーチョ・フォンターナ / 20世紀イタリア芸術 / 空間主義 |
研究実績の概要 |
報告者は、感染症の蔓延によって海外渡航が制限され、アルゼンチンおよびイタリアでの現地調査が実質的に不可能であった本年を、本研究課題の最終的な目標であるモノグラフィの完成のために、現状で執筆可能な部分の原稿を地道に作成する期間にあてた。具体的には、これまでに収集した多くの文献資料と、執筆した関連論文を再読するとともに、国内からでもとりよせの可能な資料を収集し、著作の骨子を組み立てることに尽力した。特に、前年に完成させた論文、「1930年代と1950年代の政治と芸術をめぐる飛行の表現について --ルーチョ・フォンターナの経験から--」の内容は、これまでの日本語のモノグラフィでは扱われてこなかった内容を中心においた実績であり、この研究成果を著作の中にいかに反映するかについて検討を重ねた。 また、20年度末には、立命館大学における研究発表会「イタリアにおけるモダンとアヴァンギャルドの相克Ⅰ 未来派の宣言文を読む」の場で、本研究課題において、フォンターナの宣言および思想の内容成立に影響したと考えられる未来派の宣言文“Ricostruzione futurista dell’universo”を改めて精読し、「〈未来派的世界再構築〉を読む--目に見えないものの知覚と空間主義への影響」と題して発表した。このことを通して、第二次大戦後にこの宣言の内容をふまえて成立した空間主義の思想について再考するとともに、時を経て未来派の思想が空間主義を通してどのように咀嚼されたかを明確にするため、現在、同研究発表の内容をもとにした論文の投稿を目指して執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の申請時には想定していなかった、今般の感染症の蔓延を起因とする海外渡航の制限により、実地調査が現実問題として不可能になったため、現地で実見して入手する以外の方法がない資料を手に入れることが、昨年度に続き本年度も不可能であった。このため、初年度および本年度に予定していた調査研究の内容のうち、重要な資料入手が実現せず、研究が滞ったことは否めない。また、同じく感染症の蔓延を起因として、本年度、特にその前半は、オンライン講義への急な適応準備等、専任教員としての着任初年度に起こりうる実務の増加を遥かに超えた内容・量を求められ、その対応に忙殺された。 しかし、これまでに入手していた資料によってカバーが可能な部分については、その読み込みを深めるとともに、最終的な課題の目標となるモノグラフィの骨子としての内容を固めることができつつある。このため、多少なりとも研究の遅れをとりもどしつつあると考えるが、課題申請時に想定していた進捗状況から見れば、やはり順調とは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同じく、現状での最大の懸念は、海外調査がいつから可能になるかに尽きる。前年度に予定していたアルゼンチンでの調査、本年度に予定していたイタリアでの調査の両方とも現状では実現できていないが、これは報告者本人の希望および努力によって解決する問題ではない。渡航先と本法の政策および社会状況に左右されることであるため、一研究者としては、状況の改善を祈るより他にない。 やはり、昨年と同様、可能な限り海外の資料を入手し、現状で参照できる文献を基にした執筆作業が必要と考えるが、特に資料のとりよせに関して、その中核となるイタリアの対応状況は芳しいとは言えない。図書館、アーカイヴ等も平常時の対応は難しく、平常時に現地での作業が求められる内容を、先方の人員が必要となるオンラインで依頼することは、より難しい。このため、想定していた資料を入手することが不可能なままでも、できる作業を進めてゆくように尽力したいと考えている。 また、海外調査が問題なくできるようになった際には、可能な限り早く、また充実した形でこれを実現できるよう、その下準備を進めておく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、2020年3月に予定していた本研究のためのアルゼンチンにおける海外調査と、2021年度に予定していたイタリアでの海外調査を中止せざるを得なかったため。これは、今般の感染症の蔓延を阻止するためのアルゼンチン、イタリア、日本の政策・対策・社会状況によるもの。ただし、現勤務校への着任に際し、研究に使用する機材を研究室に改めて揃える際に物品費として昨年度の差額を使用したことで、本年度の差額は多少減っている。現時点では、2021年度に海外調査をおこなえるかどうかは不透明なままだが、可能な状況になれば、これの実行のために予算の大半を使用することになる。
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