研究課題/領域番号 |
19K13000
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
巖谷 睦月 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (40749199)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ルーチョ・フォンターナ / 瀧口修造 / 20世紀イタリア芸術 |
研究実績の概要 |
数年来の感染症の蔓延が生み出した状況と、ウクライナ戦争の余波による航空旅券の高騰により、残存する研究費を使用しての海外渡航が難しい状況が続いたため、希望していたアルゼンチンおよびイタリアでの現地調査は実質的に不可能であった。そこで、イタリアよりもむしろ国内での調査にアドバンテージのある分野について研究を進めると共に、国内においても可能な分野の文献資料の収集・検討と、すでに収集してあった文献資料の検討・整理をするとともに、とりよせの可能な資料を収集することにした。 本研究課題では、これまでのルーチョ・フォンターナと空間主義についてのモノグラフィに欠けている部分を補い、最終的に新たなモノグラフィを発表することを目的としているため、日本国内にいることがアドバンテージとなる研究でありながら、これまであまり進んでいなかった、瀧口修造によるフォンターナの最初のモノグラフィの制作過程における両者の交流、また、瀧口による宣言文の翻訳過程における緻密な作業について調査し、早稲田大学イタリア研究所研究紀要に「瀧口修造によるルーチョ・フォンターナのモノグラフィ出版」を発表した。また、国内におけるフォンターナ作品の需要について、これまで谷藤史彦によって研究されてきた内容について部分的な検討を開始し、特に《空間概念 自然》のシリーズに関連する内容を一部、実作品を所蔵する遠山記念館の広報誌内に発表している。加えて、イタリア語からの邦訳がない空間主義の宣言文について邦訳と解題を作成する作業も続行中であり、こちらの成果は改めて2023年度内に論文として公表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今般の感染症の蔓延を起因とする諸外国および日本の検疫の対応、また、ウクライナ戦争による渡航費用の高騰が直撃し、海外での実地調査は現実問題として不可能であった。このため、現地でのみ入手することのできる資料を収集することが本年度も不可能であった。計画の最初の段階で各年度に予定していた調査研究においては、「海外調査」がかなりの重点を占めていたため、今に至っても重要な資料の入手ができていない部分が多く、研究が滞っていることは否めない。 しかし、研究の初期の段階では見えていなかった先行研究における欠落について、国内に所蔵される資料からの調査研究をおこなうことで、当初よりも一層充実したモノグラフィ執筆の準備はできていると考える。その意味で、最終的な目標に向けてはこれまでより望ましい形で前進していると考えるが、課題申請時に想定していた実地調査が全くできていないことを思うに、やはり順調とは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
現状の解決は、海外調査の再開によってのみ成し遂げうることだが、幸いにして感染症を起因とする海外渡航の困難については、今年度からある程度は対応が可能な状況になると考えられる。戦争を起因とする渡航費用の高騰については、今年度は可能な範囲で対応し、この研究課題について、ある程度の目処のつくところまで完成させたいと考える。各年度に予定していたアルゼンチンでの調査、イタリアでの調査はいずれも実現できておらず、これを終えずに課題の最終目標には到達できないので、最低限、調査の一部分は今年度に進め、先につなげたい。 上記の通り、今年度については、小規模ではあれ海外調査を再開し、国内でおこなうことにアドバンテージのある分野の研究を進めてゆくとともに、海外の資料を入手し、現状で参照できる文献を基にした執筆作業が必要と考える。客観的に見て、海外調査が進展していないという大きな問題を抱えたままでは、最終目標であるモノグラフィの完成については延期せざるをえないと思われるので、次年度以降、改めてより充実した形での研究計画を作成して再挑戦することを考え、その下準備となる研究を進めて、論文という形で発表してゆくことで、先に繋げてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航の制限により滞っていた調査について、2022年度はある程度進められる可能性があると予測し、そのための旅費をある程度確保して研究を続けたが、結果として海外渡航は実質的に不可能であった。このため、主に海外渡航旅費にあてた分の予算について、次年度使用額が生じている。今後の計画として、2023年度内に部分的ではあれ海外調査を実施し、その旅費として使用する予定である。
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