研究課題/領域番号 |
19K13003
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平田 裕美 (松井裕美) 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40774500)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古典主義 / レアリスム / 前衛美術 / フェミニズム / フランス |
研究実績の概要 |
I)古典主義の諸相:美術史において価値形成の一つの基準となる「古典」という概念がどのような歴史的変遷を辿ったのかを明らかにし、共同研究の成果として『古典主義再考』と題した2巻本の共編著を上梓した。 II)前衛美術作品の公的コレクション形成:昨年度収集を終えた、20世紀前半のフランスにおける国家買取に関する一次資料データを整理した。その成果は2022年度に共著書中の論文として発表予定である。 III)前衛美術と諸制度:デイヴィッド・コッティントンのA Very Short Introduction:Modern Artの翻訳作業を手がかりに、前衛美術と美術館などの制度や、美術市場といったシステムとの関わりについて概観した。またコッティントン氏と連絡を取り合い、この件に関する最新研究の情報収集を行なった。 IV)フェミニズム美術史:制度化された美術界における女性の位置付けについて、フェミニズム美術史の先行研究を手がかりにしながら考察した。 V)レアリスムの諸相:19~20世紀のフランス、イギリス、ドイツにおけるレアリスム/リアリズムの諸相について俯瞰すると同時に、ヌーヴォー・レアリスムやフィギュラシオン・ヌーヴェルなど戦後の前衛美術における「現実」概念と、戦後の思想史における日常生活論についても考察した。その成果は2022年度に共著書中の論文として発表予定である。またカジャ・シルヴァーマンの『アナロジーの奇跡』の翻訳作業を手がかりに、写真イメージと現実との関係に関する考察にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響で、フランスおよびイギリスに赴いての調査には着手できなかったものの、昨年度までに入手した一次資料や、刊行された一次資料、そして二次資料を手がかりに、研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
海外での調査が可能になり次第、フランスおよびイギリスでの一次資料調査と作品分析を開始する。また並行して、今年度着手したレアリスムの諸相についての成果発表に向けた準備を行う。この点については、写真論やフィクション論といった多方面の議論に目をくばりながら、芸術が「現実」と関わる中でいかにその価値を複層化させてきたのかを明らかにする。これに関連して、カジャ・シルヴァーマン『アナロジーの奇跡』の翻訳本刊行を目指す。またフェミニズム美術史についての先行研究の把握も引き続き続行し、芸術の価値形成におけるジェンダーの問題についての考察を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス蔓延のため、国内外における出張を伴う調査に一切着手することができず、主に書籍を取り寄せ二次資料をもとに進める作業に専念した。また2021年2月より出産のための休業期間に入り、実質1ヶ月ほど、予算を使用した研究を遂行することができなかった。このため従来予定していた予算に次年度使用額が生じた。次年度使用額については、産休が明け、国内外の出張が可能になり次第消費する予定である。
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