日本の美術解剖学の歴史研究では、明治以降に輸入された国内の美術解剖学の歴史研究が多く、その源流となっている西洋の美術解剖学の変遷についてはよく知られていなかった。今回行った18世紀の美術解剖学の歴史調査では、芸術家が実際の人体解剖ではなく、教科書や立体模型などの教材から学ぶようになった経緯が明らかになった。優れた教科書や模型といった教材が生まれれば、それに伴って教育も発展する。18世紀の歴史に基づく教訓からは、歴史の転換点となる実用的な教材は芸術家と医師のコラボレーションによって生まれることが示唆された。このことは美術解剖学の教科書や教材を作成する上で考慮しなければならない有益な情報である。
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