研究課題/領域番号 |
19K13011
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柏崎 諒 早稲田大学, 會津八一記念博物館, その他(招聘研究員) (10779078)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 狩野派 / 山下狩野家 / 深川水場狩野家 / 狩野元俊 / 狩野春雪 / 狩野了承 / 藩絵師 / 出羽久保田藩(秋田藩) |
研究実績の概要 |
2019年度は、出羽久保田藩佐竹家(秋田藩)の藩絵師であった狩野秀水家の御子孫が所蔵する粉本群(出羽久保田藩佐竹家御絵師狩野秀水家資料)の調査・研究及び、狩野派内でも有力な家系であった表絵師の山下狩野家の分家である深川水場狩野家に養子入りした狩野了承(明和5年―弘化3年〔1768―1846〕)の作品調査を行った。 狩野秀水家は表絵師である浅草猿屋町代地分家の狩野洞琳波信(延宝7年―宝暦4年〔1679―1754〕)の次男である秀水尊信の名跡を継いだ狩野秀水求信(安永2年―天保8年〔1773- 1837〕)に始まる家系である。本資料は、約600点の粉本類からなる。この制作者は秀水求信や、その子孫及び周辺絵師と思われる。この粉本類の調査及びデータ整理を行い、その概要について論じた「出羽久保田藩佐竹家御絵師狩野秀水家資料―狩野派藩絵師の粉本について―」(『美術史研究』第57冊、2019)を発表した。拙稿では、粉本を(一)寓目作品の縮図、(二)職務上あるいは自身の学習のために制作した古画の模写、(三)画を制作する際に用いた下絵類である自作下絵、(四)鳥獣や風景、風俗などの写生と、(五)それらの粉本をもとに描いた手本を製本した絵手本帳の5つに分類し、それぞれの粉本の制作事情や活用状況について考察を行った。 狩野了承は、徳川家斉の姫君の御用を多く務めたことが知られている。本年度は、複数点の狩野了承作品の調査を行った。調査作品はいずれも個人蔵でこれまで知られていなかった作品である。了承は狩野派でありながらやまと絵風の画が多く知られている。しかし、本年度に調査した作品には、これまで知られていたやまと絵風とは異なる画風の作品もあり、了承の画業を論じる上で重要な作品と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り出羽久保田藩佐竹家御絵師狩野秀水家資料の調査研究を行った。本資料については当初の想定よりも多くの粉本資料が含まれていたため、予想以上に調査日数が必要となった。しかし、資料調査は2019年度で終了しており、現在は調査結果を整理している段階である。本資料には狩野秀水求信やその子孫だけでなく、その周辺絵師たちが描いた粉本が多く含まれている。また、制作における事情などが墨書されているものも相当数あった。資料自体が有する情報が多大であったため、早い段階での成果発表が可能となった。しかし、想定以上の情報が得られたことにより、研究課題は増加した。そのため、今後も研究を継続する必要があり、研究期間を2020年度まで延長する。 一方で、2019年4月の段階では、新出作品の調査がどれほど可能かの見通しが立っていなかった狩野了承作品の調査に関しては、2019年度も複数点の新出の作品調査を行う事が出来た。 本研究期間で行う予定であった2つの調査・研究の内、一方は想定より期間が延長する見通しとなったが、もう一方は進行が早まったため、総合的には研究進捗状況は順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、引き続き出羽久保田藩佐竹家御絵師狩野秀水家資料および狩野了承の調査・研究を行うこととする。出羽久保田藩佐竹家御絵師狩野秀水家資料については、2020年度にも成果発表を行う準備がある。当初は、出羽久保田藩佐竹家御絵師狩野秀水家資料に含まれる粉本の制作者の実作品の調査を行う予定であった。しかし、2019年度に調査・研究を進めた結果、現段階では本資料と密接な関係があると想定される実作品は確認出来ていない。そのため、今後の成果発表と研究の進展によって、必要が生じた場合のみ実作品の作品調査を行うこととする。 狩野了承作品については、当初の予定していた作品と、新たに存在を確認できた新出の作品の調査を行う。そして、作品調査の結果を踏まえた了承の画風変遷等について検討する。2021年度に速やかに成果発表を行うべく、準備を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に秋田県内での作品調査を予定していた。しかし、当初の研究計画に反して、データ整理等に時間を要したため、調査日程が後ろ倒しになっていた。また、研究の進展に伴い、当初予定していた調査の必要性を検討する必要が出てきた。そのため、2020年度に作品調査の必要性について検討を行う。その上で、本研究において重要度の高い調査作品の選定を行い、より関連度の高い作品の調査を行う予定である。なお、狩野秀水家の作品が多く残るのが秋田県内のため、引き続き秋田県内での調査を想定している。
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