研究課題/領域番号 |
19K13013
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
西谷 功 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80773928)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肖像画 / 仏牙 / 忌日儀礼 / 追善儀礼 / 葬送 |
研究実績の概要 |
本研究は、東アジア仏教的視座から中世日本葬礼史とその文化の再検討を行うものである。このため、同時代の中国・宋代や韓国・高麗時代における仏教の葬送・追善儀礼に関する文物資料を調査・収集して、その実態解明を行い、比較資料を提示することを主目的とする。 今年度は、新型コロナウィルスの影響によりフィールドワークや調査が行えなかった。したがって、文献資料や国内外の研究書の収集を中心に研究を行い、以下の論考を公刊した。 まず、葬送・追善文化研究の一環として、宋仏教の祖師画像の作例収集を行い、祖師忌(開山忌)とよばれる儀礼空間における祖師画像の機能的役割を考察した。加えて、その儀礼空間で読誦される宋代江南地域で制作された祖師讃歎文(礼讃文)の内容と祖師画像の姿が一致することをあきらかにした。上記成果と関連するものとして、奈良・唐招提寺から資料提供を受けた『南山北義見聞私記』の全翻刻と解題を執筆し、泉涌寺流の宋代仏教儀礼(年中行事、葬送儀礼など)に関する新たな知見を公表した。上記研究成果の一部は、京都国立博物館で開催された「鑑真和上と戒律のあゆみ」展でも提示した。 また、仏教的聖遺物である釈迦の遺歯(仏牙舎利)と伝承される遺物の報告書や研究論文の収集を行い、仏牙舎利が歴史上どのような宗教的、社会的、政治的役割を果たしたのかを概観し、その形状に一定の規範性があること、また宋代皇帝の管理する聖遺物として儀礼空間の本尊となり、諸地域において供養されていたことを論じた。宋代の仏牙舎利信仰の実態解明は、日本各地に伝承される仏牙舎利との比較することで、日本における仏牙舎利信仰に対する新たな視点を提供できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、北米の博物館および韓国の高麗時代を中心とした石塔・墓塔の実地調査・研究、および国内調査がかなわなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に続き、新型コロナウィルスの影響のため国外調査が現状ではむずかしいと判断している。このため、調査予定の文物に関する国内外の研究論文や書籍などを調査・収集して実地調査の欠を補い、しばらくは国内の調査に比重を置いて研究を進める予定である。また、海外研究者の助力や海外研究機関・博物館のデジタルコレクションなどの閲覧を通して研究課題に関連する作例の収集を図る予定である。 以上と並行して、宋代仏教を受容した泉涌寺流の臨終行儀や葬送儀礼に関する論述を踏まえ、それらの儀礼文化が鎌倉時代に影響を及ぼしたことを実証するために、同時代の浄土僧や禅僧が行った臨終行儀や葬送儀礼の関連資料や研究の収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響のため、調査ができず「旅費」の計上分が消化できなかったため。時勢を踏まえて調査を行いたいが、「旅費」の一部は物品費としての使用も考えている。
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