研究課題/領域番号 |
19K13021
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渡部 宏樹 筑波大学, 人文社会系, 助教 (40834487)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日系アメリカ人 / 文化史 / 日系人の強制収容 / アメリカ史 / 第二次世界大戦 |
研究実績の概要 |
『日系アメリカ文学雑誌集成』に収録されている日系人が発行した雑誌やマイクロフィルムで保存されている米国で発行された日本語新聞などの一次資料を調査し、自身で保有していたデータの整理も行った。また日米の日系アメリカ人の歴史についての研究書を参照し、今後2年間の議論の枠組みを検討した。この研究の前段階の研究を行っていた時はアメリカ在住であったため、今回主に日本語の文献を集中的に調査したところ、英語の文献中心の調査では見落としていた点をいくつか発見することができた。その結果、20世紀前半の日本における言説と同時代の米国日系移民社会での議論との関係がある程度明確になった。具体的に一つ例を挙げると、『日本風景論』を著した地理学者の志賀重昂が1910年代に複数回渡米しており、西海岸の主要都市で講演を繰り返していた。本研究の「風景」というテーマから考えると山岳的な険しい風景への注目を促した志賀重昂の存在は、和歌的な抽象化され理想化された風景観と対立するものである。1930年代に発表された和辻哲郎の『風土論』などと合わせて、これらの思想的影響が具体的にどのように日系人の間に広まったかは今後の課題であるが、このように文献資料の事前調査は概ね順調に進んだ。 しかし、2020年3月に予定していたアメリカの日系人強制収容所跡地にある資料館での現地調査は、covid-19感染症の拡大のため渡米できず行えなかった。また現地調査と合わせて参加する予定だったSociety for Cinema and Media Studies年次大会やAssociation for Asian American Studies年次大会は開催が中止され参加できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査は概ね順調に進んでいる。しかし、2020年3月に予定していたアメリカの日系人強制収容所跡地にある資料館での現地調査は、covid-19感染症の拡大のため渡米できず行えなかった。またそれに伴って、予定していたSociety for Cinema and Media Studies年次大会での研究発表、Association for Asian American Studies年次大会へは、開催自体が中止され参加できなかった。2020年6月に日本のアメリカ学会でも3月の調査に基づいた研究発表を行う予定だったが、アメリカ学会自体が中止になった。
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今後の研究の推進方策 |
covid-19感染症の影響は大きく、また事態の収束がいつになるか先行きが不透明であるため、今後の研究の方向性の再検討が必要である。スペイン風邪の流行時に自体が平常化するまで3年近くを要したことを考えると、残り2年間でアメリカに現地調査にいけない可能性もあるため、最悪の事態も想定して、出版された書籍、米国のアーカイブがオンラインで公開しているデジタル・データの利用を中心にした研究計画の練り直しを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月にアメリカの資料館での現地調査と学会参加を予定していた。しかし、covid-19感染症の拡大のため国外渡航ができなかった。2020年4月以降、covid-19の収束のタイミングを見計って現地調査のため渡米する予定である。covid-19の収束が見込めない場合は、米国のアーカイブにデータのスキャンと送付を依頼するための経費として考えている。
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